5 未送信
できれば不良と関わりたくない美雪は、目を合わせないようにひたすら携帯電話を弄り続けていた。瑞葉と海彩の携帯電話に待ち合わせ場所の変更をお願いするメールを送信してから早五分。二人からメールが返信されてくる気配は微塵もない。
これは二人が全速力で走って向かって来てくれているからメールを見られないということだろうか、それとも二人とも未だ熟睡中のためにメールに気付いていないだけのだろうか。どちらにしても神社で一人、不良に怯える美雪に知る術はない。
そして不安なときは更に不安になることを考えてしまうのが美雪だった。
だって、わたしと同い年くらいの子が神社に用事があるなんて思えない。あるとしてもわたしと同じように待ち合わせの場所にするくらいしか思いつかない。そして待ち合わせの場所にしているということは、待ち合わせている相手も当然いるはず。類は友を呼ぶ、不良は不良を呼ぶ、不良が増えるに違いない。今はお互い一人だから何も起きてないけれど、不良の仲間が来たらきっと絡まれてしまうだろう。わたしはその場でぴょんぴょんとジャンプをさせられて、お金を取られてしまうだろう。そこで目を付けられてしまったわたしは、不良の財布と使いっ走りになって三年間の高校生活を過ごすことになるのだ。それだけじゃない。勉強が疎かになって就職も進学もできないかもしれない。
そうして頭を抱えて悩み込む美雪は、それを隣で不思議そうにじっと見つめる不良に気付くことはなかった。