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49 逆転
教室内にチャイムが響き渡る。普段のこの時間ならば始業の合図を知らせる鐘なのだろうけれど、今日は少し違った。
「お、ちょうどいいしあたしは自分の席に戻るよ」
「そうか」
「またあとでね~」
椅子から立ち上がり、教室の左側最前列の席に向かう瑞葉を、立っている美雪と座っている海彩が見送る。
美雪が海彩の後ろの席に座るとすぐに先生が入ってきた。アンダーリムの眼鏡を掛け、片側で一つに纏めた長い髪を肩の前に垂らしている。スーツ姿なのは入学式だからだろうか。
先生は教室を見回して全員が着席しているのを確認する。
「よーし、全員いるなー。じゃあ体育館に行くから、名簿の順に並んでー」
良く言えばクールで格好良い、悪く言えばぶっきら棒で面倒くさがり、そんな印象だった。
教室内の左側前列の生徒から順番に廊下に出て並んでいく。歩きながら海彩は美雪を振り返った。
「話が違うよ~雪ちゃん~」
「しーっ。今は静かに」
「う~……」