45/448
45 途中まで可愛かった
「黒板にみんなの席が書いてあったから、それでわかったんだ。ちょっと見にくかったけど」
美雪が教室の前を指差す。
瑞葉と海彩が目で追った先にある黒板には“入学おめでとう”という可愛らしい文字の下に、手書きでクラス全員の席と名前が書かれていた。
「へ~。まじめな先生そうだね~」
「先生そうってなんだよ。真面目そうな先生、な」
「あたしてっきり、ありきたりなお祝いの言葉しか書いてないと思って見てなかった」
「いや見てあげろよっ。ありきたりな言葉だとしても大分凝って書かれてるぞ」
「ゴシック体~?」
「凝るけどっ。それは可愛くないだろ」
「雪ちゃんひどい! 感性は人それぞれだよ。ね、海彩ちゃん!」
「あまりかわいくないかも~」
「あれー?」
「ゴシック体ってどんなだっけ~?」
「知らずに話してたのかよっ」
「黒くてひらひらした服を着てる文字のことだよ!」
「ゴシック違いな。どんな文字だよ」