4 身震い
ああ、少し寒いなあ。もう一枚何か羽織ってくれば良かったかなあ。と、神社の鳥居に凭れ掛かる美雪は、瑞葉と海彩が来るのを身を震わして待っていた。
身を震わしている、といっても寒さで震えているわけではなかった。もう四月なのだから、桜の木が薄桃色の花を咲かせ始めるくらいには温かく震える程ではない。
それならば、待ち合わせの時間を過ぎてもやって来ない瑞葉と海彩に対しての怒りによって体を震わしているのかと言うとそれも違う。瑞葉と海彩が時間を守らないのはいつものことで美雪ももう諦めているし、まあそれでも後で一言二言怒るのだが、第一に怒りで震えるくらいならばこんな場所にじっとしていないで一人で学校に行くか、二人を迎えに行くか、せめて電話を掛けているだろう。
それではどうして震えているのかというと、緊張、なのかもしれなかった。それも、怖れや恐怖という感情に近い緊張。別にこれからの学校生活に緊張している訳ではない。むしろ瑞葉と海彩と同じ学校に通うことが出来て楽しみなくらいだ。じゃあ何に緊張しているのかというと、まさに今、この状況に対してだった。
美雪が今凭れ掛かっている鳥居の柱と対になる反対側の柱に、同じように凭れ掛かる同じ制服を着た女の子。しかし同じなのは制服だけで、他は校則違反の丈の短いスカートに校則違反な結び方をしたネクタイ、校則違反である染めた頭髪、そして法律違反の煙草。
目を合わせたくないので顔はわからないけれど、この子は不良だと美雪は確信した。