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345 押してダメならゴリ押し
「えへへ……雪ちゃん、可愛いよお……」
瑞葉が白いごはんを箸でつつく。
「……もう病気の域だろ」
美雪は引き気味に溜め息を吐いた。
「雪ちゃん、かわい~」
海彩も瑞葉の真似をして、ツンツンとごはんをつつく。
「お行儀悪いからやめなさい」
「は~い」
美雪に軽く窘められ、海彩は素直に弁当を食べ始めた。
「どうして海彩ちゃんには注意するのに、あたしにはしてくれないの?」
瑞葉が不満の声を漏らした。
「言っても聞かないから」
「うりうりうり」
頬を膨らましたまま、箸で米粒を掴んだ瑞葉はそれを美雪の唇へ押し付ける。
「注意する以前の問題だからっ。あと、食べ物で遊ぶのやめろっ」
「でも食べ物粗末にしちゃダメだよ?」
悔しそうな顔をしつつ、美雪はぱくりと瑞葉の箸の先を咥えた。