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みみみみ  作者: 椥桁
日常
340/448

340 強奪

「ねえ椅子貸して! 代わりに雪ちゃんのお弁当のおかずあげるから!」

 瑞葉(みずは)が隣の席に座っていた子に声を掛ける。

「勝手にわたしの弁当を交換対象にすなっ!」

 咄嗟に美雪(みゆき)が抗議した。

「ん……」

 隣の子は黙って首を横に振る。前髪が長くその表情は見えなかった。

「かー、やっぱ冷凍食品じゃダメかあ―」

「お母さんの手作りだよ、失礼なっ」

 瑞葉の脇腹に美雪の手刀が命中する。

「ん!」

 瑞葉が悶ていると、隣の子は立ち上がって椅子を差し出してくれた。

「ん!? いいの!?」

「ん」

 首を縦に振った。

「もしかしてさっき断ったのって、“雪ちゃんのお弁当はいらない”って意味だった?」

「ん」

 もう一度、首を縦に振って頷いてみせた。

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