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338 育ち盛り
「あ、ほらチャイム」
スピーカーから流れる鐘の音に美雪が反応した。
「おっと」
瑞葉がチャイムの音に合わせて机を叩く。
「お前がチャイム鳴らす必要はないから」
「うん、そうだった。損した。……痛い」
美雪が止めると瑞葉は手をさすった。
「まず得する要素がなかったろ……」
「……違うの。こういうのは損とか得とかじゃないの」
「今“損した”って言っただろ」
瑞葉が手を大事そうに握って誤魔化しているとチャイムが鳴り終わった。
「授業が始まるね~」
海彩が楽しそうに瑞葉の手をギュッと握った。
「しっかり勉強しなきゃだね!」
「そうだな」
「勉強しすぎて明日から先生になったらどうしよう……?」
「そんな急成長しねーよっ」