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334 当て逃げ
「恋人かよ……」
手を熱く繋ぎ合う二人を見て、美雪は息を漏らした。
「もっと言って!」
嬉しそうに瑞葉が手招きをする。
「はいはいおめでとうおめでとう。……わたし、席外そうか」
棒読みで祝福した後、この場から逃げようとする美雪。
「いいよいいよ! ここにいてよ!」
瑞葉はぽんぽんと机の上を叩いた。
「瑞葉、見られるの好きだもんね~」
海彩》が楽しそうに瑞葉を見つめる。
「ちが……や、ちがわないけど! 今回は違うの! 純粋に雪ちゃんに見てほしい……じゃなくて、いてほしいの!」
慌てて瑞葉は無意味に手を振りながら、訂正しようと試みた。
「なんかもう色々とぼろが出まくりですけど」
「だって……好きな人には当たって砕けろっていうし……」
恥ずかしそうにもじもじする瑞葉の声が段々と小さくなっていった。
「当たり方が全然違うっ!」