328/448
328 上書き保存
「“助けて”ってなんだよ……」
「なんか、とっさに」
美雪が面倒くさそうに繋がれた手を振り払うと、瑞葉はその手で頭を掻いた。
「無関係の人を巻き込むなよ」
すみやかにこの場を離れていった江口さんの後ろ髪を、心配そうな美雪の目が追いかける。
「無関係じゃないよ? これから仲良くなるよ?」
「仮定で話を進めるなっ」
「あたし達の結婚式はどこであげようか?」
「起こり得ない話を進めるなっ」
美雪が自身へゆっくり伸ばされる腕をもう一度払い除けると、瑞葉は儚げに目を伏せた。
「そっか……。あたしの病気、もう治らないもんね……」
「いや、そんな理由じゃないけど」
「お葬式で泣いてね」
「どんな別れの言葉だよ。てか不治の病なんか患ってないだろっ」
「……恋の病だよ」
えへへ、と恥ずかしそうに瑞葉は微笑む。
「そんなの違う人を見てれば治るよ……」