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327 巻き込み
「この手はどうすればいいの……?」
瑞葉は、美雪へと伸ばしたけれど届かなかった手を左右に小刻みに振るう。
「さみしいよ~……」
同じく、海彩も空いた手を揺らした。
「知らないよ……二人で握ったら?」
美雪は頬をほんのり赤くしながら困った顔を見せた。
「あ! 江口さーん、助けてー」
瑞葉が近くを通った生徒に手を伸ばす。それは偶然にも、昨日瑞葉が美雪の席を訊いたときと同じ人物だった。綺麗な長い黒髪をなびかせながら江口霜乃は振り向く。
「ばっ、やめろっ」
慌てて美雪は瑞葉の手を取った。
「えへへ。ごめんね江口さん、なんでもなかったあー」
瑞葉は嬉しそうに美雪と繋がった手を振り回す。
「いきなりごめんね、江口さん。忘れちゃっていいからね」
「は、はい……」
「わたしも忘れたい……」
美雪達を見て表情を二転三転させた後、江口さんは足早に去っていった