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324 時期尚早
教室の戸ががらがらと開き、担任である三田先生が顔を見せると、ちょうど始業を告げるチャイムが鳴った。
好き好きに話していた生徒達が名残惜しそうに自分の席に着く頃には、先生も教壇の上に名簿を開いて立っていた。
「サンタさん!」
躊躇いなく、瑞葉が呼ぶ。
「“みた”先生」
すぐに本人からそう訂正された。
「サンタ先生」
「言い直す場所はそこだけじゃない」
「五分前行動を心がけて下さい」
瑞葉は言い直さずに続けた。
「おまえ……。一時間前には職員室に居たよ」
「なんか、“宿題はやったけど家に忘れた”みたいな言い訳ですね」
「文句なら職員室での朝礼が長い校長に言ってくれ」
「いいんですか? あたしなら本当に行きますよ?」
「すまん、やっぱやめてくれ」