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321 立っている者は
「お母さんが魂削ってまで作ってくれたお弁当、こぼれちゃったけど大丈夫なのか?」
「……おかあさん!!」
美雪が机の下に目を落とすと、瑞葉は床に手を付いて必死に何かを探す。
「いやいや、いないから」
「でも! お母さんの魂が!」
瑞葉は何かを手の平に包み込む。
「削った魂、弁当に詰めないから」
「アタシ~……瑞葉のお母さんを~……」
海彩が自分の口を両手で覆った。
「だから削った魂弁当に入ってないから。食ってないから」
「おえええ~……」
「だから食ってないからっ。吐き出すな、失礼なっ」
「失礼なのは雪ちゃんだよ!」
瑞葉は、美雪の前で仁王立ちになる。
「え?」
「ひとんちのお母さんをなんだと思ってるの!?」
「それはお前だろっ。自分の親をなんだと思ってんだっ」