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317 昼メシなし
「実はアタシ、お弁当は持ってるんだ~」
思い出した、というように海彩が両手をぺちんと合わせた。
「お昼のでしょ?」
「お昼のだよ~」
瑞葉の質問に海彩がニコニコと頷いて返す。
「これは朝のだよ!」
「朝のお弁当ってなんだよ……」
美雪が小さく言った。
「朝弁だ~」
海彩は何も疑問に思ってないようだった。
「海彩ちゃん、どっちのお弁当食べる?」
蓋を閉じた弁当箱を二つ、瑞葉が机の並べる。
「え~。迷うな~。」
「……どっちも同じじゃないのか?」
弁当箱の外見は違えど中身も違うなんてそんな面倒なことはしないだろう、と美雪は思った。
「右があたしの弁当箱で、左がお父さんの弁当箱だよ」
「お父さんっ!」