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315 育児
「海彩、わたしの弁当少し食べるか?」
ここでデレか! と小さな声で瑞葉は驚いた。
「何か言った?」
通学鞄の中から白色のランチバッグを取り出した美雪が瑞葉に顔を傾ける。
「ううん。甘やかしちゃダメだよ雪ちゃん!」
平気で嘘をつく瑞葉。
「おまえが厳しすぎるんだよっ」
「強い子に育てるためには、谷から突き落とさなきゃなんだよ」
「獅子かよっ!」
美雪は瑞葉にツッコミつつも、さりなげなく海彩に自分の弁当を勧める。
「瑞葉からもらうからいいや~」
それを海彩はそっと押し返した。
「おおう、まさかの、あたしか」
名指しされた瑞葉が呆気にとられる。
「自業自得でしょ」
「……海彩ちゃんは強い子に育ったね。あたしは嬉しいよ」
「いや、育てたのは親御さんっ」