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310 二日目の朝
「おっはよー!」
瑞葉が教室のドアをあけ、元気に挨拶する。
するとざわめいていた教室が急激に、しんと静かになった。みんな瑞葉に注目している。
「まだ顔も名前もわかんないのに、そんなことすれば浮くに決まってるだろ……」
その後ろから教室の中を覗いた美雪は、瑞葉を慰めるわけでもなく、そっと背中を押した。
「はやく座ろ~……。疲れたよ~……」
海彩も瑞葉の両肩にもたれ掛かるように手を乗せて、教室の中へ進むように促す。
三人が敷居を跨ぐと、多種多様な反応が返ってきた。
おはよう、とにこやかに微笑んでくれる人。笑い声を上げて手を振ってくれる人。静かに奇異の目を向けるだけの人。
よかったな。ノリの良い人達が多くて。そんないたずらっぽい顔をして、美雪は瑞葉を見た。
「絶対わたしたち、変な人に見られてるよ……」
瑞葉が美雪の腕にしがみ付く。
「お前がいうなっ」
「あはは~っ」
笑いながら海彩は覆い被さるように瑞葉に抱き着いた。
「これこそだよっ!」