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306 力不足
「はあー……、これから毎日この坂を登るのかー……」
校門をくぐった瑞葉ががっくりとうなだれる。
「まあ、ちょっと傾斜がきついよな」
美雪は頷いた。
「車、使いたいね~」
海彩が今さっき歩いてきた道を見返しながら言う。
「あー……、それお嬢様っぽーい……」
「だって、お嬢様だもん~」
疲れているのか、適当に会話をする二人。
「……そうだ雪ちゃん! これからは手を繋いであたしを引っ張ってよ!」
「やだよ、疲れる」
はっと顔をきらめかせた瑞葉が伸ばした腕を、美雪は反射的に振り払った。
「冷たい……」
「じゃ~、アタシが瑞葉を引くよ~」
払われた手を瑞葉が一人でさすっていると、海彩がそれを握った。
「えー、海彩ちゃんはいいや。あたしが引っ張ることになりそうだし」
「あまえの方が酷いだろっ!」