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30 雪ふって葉彩る
「待ち合わせ時間をずらしてたなら、海彩が急いで来る必要もなかったよな? それを見越してわたしが飲み物を買ってくる必要もなかったよな?」
「まって! 全部正論だけどまって! あたしの意見もきいて!」
瑞葉が美雪に両手を合わせる。
「なに?」
「えっとね。それはね。はやくみんなに会いたかったから」
もじもじしながら瑞葉は言った。それがどうせ演技だとわかっていても、それでも美雪は急転換な瑞葉に照れと嬉しさを隠すことが出来ず、下を向きながらぶっきらぼうに小さく呟く。
「ああ、もう。……許すよ」
「ほんと!?」
まさか聞かれると思っていなかった美雪の顔は赤く染まり、照れ隠しの照れ隠しなのか、その口から出てくる声は不自然に大きくなった。
「うそ! また今度何か奢れ!」
「ぜんぜんおっけーっすよ」
「あのね~、アタシも雪ちゃんと瑞葉に会えるのず~っと待ってたよ~?」
「ああもう! なんなんだおまえらは!」
「ふっ。この照れ屋さんめ」