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29 結局殴られませんでした。
「まあ、大体予想できてるけど」
美雪はもう慣れっこだという感じに呆れていた。瑞葉がそれを汲み取って先に言う。
「うん。待ち合わせ時間はかなり早めにしたし、入学式の時間も嘘」
「えええっ!」
海彩は今更驚いていた。
「春休み前、任せとけって言ってたよな」
美雪が詰め寄る。
「それは本当」
「嘘じゃん」
「ぐふっ」
「瑞葉いたそ~」
海彩が、お腹を押さえる瑞葉を見て言った。もちろん美雪が手を出したわけではなく、瑞葉の演技だ。ただ、海彩が瑞葉に合わせて言ったのか、それとも本当に演技に騙されたのかは定かでない。
「待って。まだ殴ってないから」
「え、結局殴られるの?」
「そのための練習じゃなかったの?」