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25 恋は何度でも溢れ出るもの
海彩の胸に顔を埋めて抱きついていた瑞葉はハッと頭を上げる。その口はあんぐりと開いていた。
「………………」
瑞葉はまるで油の切れたブリキの人形のようにギ、ギ、ギ、とゆっくり首を回して美雪の方を向く。
「ごめんね雪ちゃん! 落とすつもりはなかったの! でも精一杯探すから許して! 地面を舐めてでも探すから!」
「いいよ、そこまでしなくても。ゆき……ジュースなんて元から存在しないし」
「いいの? 雪ちゃん優しい! 好きになりそう!」
抱きつこうとする瑞葉を、美雪は頭を押さえて止める。
「な、ら、な、く、て、い、い、か、ら」
「今なら雪ちゃんすきすきジュース出るかも!」
「永久機関~?」
海彩が美雪を指差した。
「ホントだ! 雪ちゃん永久機関説!」
「いやいや、どう考えてもあっちだから。いろいろと」
美雪は自分に向けられている海彩の指を、瑞葉の方へと誘導した。