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24 Snow juice
「ふざけてないよ! だって、雪ちゃんを見てると心がトクントクンするんだもん!」
瑞葉が胸を両手で押さえて声高々に言った。
「ちょっと鼓動が弱いな?」
美雪がつっこむ。隣で海彩が小さく吹き出した。
「……トクトクトクトクトク?」
瑞葉が今度は左手をコップに見立てて右手を胸の前で傾けた。
「注ぐな注ぐな。やっぱりふざけてるだろ」
「ひどい、ふざけてなんかないのに! ほら!」
何かが注がれているコップに見立てた左手を、瑞葉は美雪に差し出した。
「いらない。ちょっときもちわるいし」
「うわあああん。雪ちゃんにあたしの初恋をもてあそばれたよお……。海彩ちゃああん……」
泣き真似をしながら海彩に抱きつく瑞葉。
「ん~、よしよし」
海彩がその背中を優しく撫でる。
「いや、遊ばれてるのはわたしのほうだろ……」
瑞葉が海彩の胸に顔を埋めたまま、首をぶんぶんと横に振った。
「でも~、瑞葉いま、雪ちゃん大好きジュースどっかやっちゃったよね~?」