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23 お熱
「いやいや、これアクエリだから。それにこんなに手汗出ないし」
美雪が中身の入った五百ミリリットルのペットボトルを瑞葉の目の前で揺らす。
「え~、でも、なんか白く濁ってるよ~?」
海彩がペットボトルを指差した。
「それは体に良い成分です。そもそもわたし手汗かかないから」
「もう、そこまで言うなら飲んであげるよ。雪ちゃんの、て、あ、せ」
「なんだおまえらは、わたしを汗っかきキャラにでもしたいのか?」
美雪からペットボトルを受け取り、キャップを開けて一気に半分ほど飲む瑞葉。
「雪ちゃん! これアクエリだよ!」
「最初にそう言ったはずですけど!?」
海彩がケラケラと笑いだす。
「えー、あたし言ったのに。“運動はアクエリ、病気はポカリ”って」
「……合ってるよな?」
「あたし病気だよ?」
「どこがだ」
「恋の病!」
「ふざけんな」