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22 やさしいみず
「そうだっ、あたしあの坂を走ってきたんだった……あー、のどが乾いた!」
自分の喉を掻き毟る瑞葉。
「そのジェスチャーだと喉が痒そうなことしか伝わってこんわ! しかも今更かよ」
瑞葉にツッコミを入れる美雪。さらに海彩が一言。
「時差ボケかな~?」
「ボケの意味が違ってくるわ!」
「あーもー、のど乾きすぎてしにそー。雪ちゃんの手から出てる水飲んでもいー?」
瑞葉が美雪の手の平を舐めようとする。美雪は慌てて手を引っ込める。
「わっ、きもちわるいからやめろばか! それに汚いし! 腹壊すだろ」
「……雪ちゃん、あたしのおなかの心配してくれるの?」
「そうだよ~。もう瑞葉の体は瑞葉だけの体じゃないんだから~」
瑞葉のお腹を優しく撫でる海彩。
「……誰の子だよ。ほら、飲むならこれ」
美雪が鞄から五百ミリリットルサイズのペットボトルを取り出す。
「おっ、羊水くれるのかい? ありがとう!」
「そんなものあげません。てかあげれません。持ってないし」
「え……。じゃあこれ、雪ちゃんの手汗……?」