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205 一目
「んー……」
美雪が自分の財布を開いて中身を確認する。その表情は憂いを帯びているようだった。
「どうしたの~? おサイフ落としちゃった~?」
海彩が心配する。
「節穴にも程があるだろっ……」
逆に美雪が海彩を心配した。
「あれかもよ。バカには見えない財布、かもよ?」
瑞葉が思いついたように言う。
「またかよっ」
「あたしも見えない」
「やっぱりなっ!」
「えへへ」
「てか、バカには見えない○○なんて存在してないから」
「わかんないよ? バカだから見えないだけかもしれない。バカの定義って人それぞれだし」
「哲学かっ」
「違うよ!? バカだよ!!」
「おまえはそこそこ頭いいよ」と、美雪は声には出さず心の中で呟いた。