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19 喜哀楽怒
「あっ、二人ともおっそーい! もう待ちくたびれちゃったよ」
「そりゃあ一人で勝手に駆け出せばそうなるでしょうね……」
これから入学する学校の前でぴょんぴょんと飛び跳ねる瑞葉に、海彩の手を引いてやってきた美雪は呆れてそう言った。
「おやおや? 初日から手を繋いで登校とは、ラブラブですなあ~、おふたりさん」
瑞葉が品のない笑みをにたにたと浮かべる。
「誰かさんが急に走り出すから、慌てた海彩が躓いて足痛めちゃったんだよ」
海彩の足を美雪は指差す。瑞葉も釣られて美雪の指の先を辿った。
「えっ……、そうなの? そうなの……ごめんね、海彩ちゃん」
さっきとは打って変わってしょぼくれる瑞葉に海彩は笑顔で返す。
「ううん、大丈夫だよー。ほんとは転ぶ前に雪ちゃんが助けてくれたから、どこもケガしてないよ」
海彩は自分の足を、右足、左足、の順にふらふらと振ってみせた。
それを見て安堵した瑞葉は、きっと美雪をにらむ。
「きさまっ! だましたなっ!」
「うん、まあ」
美雪は即答した。