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120 膨らまない
「絵の具の肌色ってさ、そのまま使うとあんま肌色じゃないよね?」
瑞葉が海彩の頬を指で突つつく。
「な~ふ~~」
「こらこら、やめなさい」
それを止める美雪。
「ほら見て! 海彩ちゃんのほっぺた、右と左で色が違うよ!」
「瑞葉がつつくからだよ」
「あのままなにかされるのって思ってドキドキした~」
「良かったな、何もされなくて。……結構ほっぺた赤いけど」
「うん~。ほっぺほかほかする~」
「ほっぺがほかほかするってなんかいいね!」
「おまえが言うなよっ」
「海彩ちゃん大丈夫? 冷やす? 水あげようか? 飲みかけだけど」
「コップの水じゃ零れるだろっ」
「頬袋があるからいいかなって」
「袋違いっ。ないから、そんなの。海彩も人間だから」
「ん~~!」