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僕は華に囚われる  作者: 松屋
3/3

花海棠は秘めやかに

アルコールとタバコがひどく臭う

大音量で流れるアップテンポな音楽とチカチカ廻るライトに正常な感覚が失われていくみたいだった

ズキズキと痛む頭を抱えながら男についていく


「ほら、翠ちゃんも飲めよ」


周りの人間はいかにも大人しそうな『桐村翠』が何かやらかすのを期待している

ここで白けられては計画は破綻だ。


「…ええ先輩。飲ませていただきますわ」


取ってつけたようなお嬢様言葉にまわりは嘲笑と物珍しさを向ける

お酒なんて飲んだことないしそもそもこんな何が入ってるかわからないもの飲めるはずがない

…だけど後戻りはできない


「―っ!」


口内に広がる火のような嘔吐物のような感覚

必死に喉を通らせようとするが――


「っあ゛、う゛ぉえ」

「うわ、汚ねぇっ!」


喉に入った瞬間吐き出してしまった

苦しい気持ち悪い今すぐ口を洗いたい

吐き出してしまった恥ずかしさと苦しさで涙が浮かぶ

まわりの不良崩れの人間はそんな私を面白がって笑ってる


「翠ちゃん大丈夫かぁ?ほら水飲めよ!」

渡されたグラスを一気に飲み込む

「―っぶぁ!」

「あ〜ごめんごめんこれ水じゃなかったわ〜」

わざとらしい声に肩に回る気持ち悪い手のひら

周りの女、男共は口々に話しながらそんな二人を見ていた


「おいおいこんな子に可哀想だろ。あの(・・)部屋で優し〜くしてあげろよ」

きたねぇきたねぇと叫んでた男がにやにやと笑いながら話しかけてきた

「ほら、そういうことだから翠ちゃんこっちきな」

…絶対嘘だ

こんなの騙されるのはとんだ箱入りのお嬢様だけだ。

だけど『桐村翠』は゛箱入りのお嬢様゛じゃなくてはならない


「―先輩、つれってって…」


甘すぎる媚びでも舐めていろ


                        ▼



「―っは、ぁんん…」


お約束というべきか奥まったところにある一室に連れ込まれた瞬間私は貪られている

初めての感覚にクラクラしている自分と冷静に次の一手を考えてる自分がいる

――こんなところでバレたらおしまいだ。口を封じさせる手はあるが利用価値の高いものは最後まで残しておくべきであろう。


「はっ、ん、ねぇせんぱぁい…シてほしいの」

「みどり、は、はぁはぁ…みどりって意外と経験あるのか?」


――その言葉が終わると同時に男をベットに押し倒す


「なんだ意外とヤル気マンマ「うるせぇぞEランククソ野郎が」


両手は首へ、片足は股間を踏みつける


「うぎゃぁぐ…な、なにしてんだ翠!」

「首を占められた赤ん坊だってもっと可愛い声だすんじゃないの? セ・ン・パ・イ?」

足の力を強める

学園は生憎靴の指定はない、なのでヒールが高く細いせいで男はもがく


「お、おいこんなことやってどうなるかわかってんだ、っがぁあ!!」

「痛い、やめてくださいじゃないの?」


さらに強く踏むと男は弱気になってくる

見た目自分より一回りも小柄で重いものなんかもったことなさそうな女にでも弱いところを人質に取られていると怖くなるのだろう。


「な、なんでこんなことするんだ!お前も乗り気だっただろ!」

「…あのね、センパイ 私はセンパイにシてほしいコトがあるだけなの。シてくれたらセンパイにもうすこし優しくできちゃうかも」

「わかったわかったから足をどかしてくれ…」

「嘘つき」

私の中の優しさが動いたのか今度は足ではなく両手に力を入れる


「言うこと聞いてくれないとコレ、先輩達の秘密喋っちゃうかも」

「ヒ、ひみつ?」

苦しくて頭を左右に振りながらなんとか逃れようとする様はまるで芋虫だ


「そう、例えばぁお酒のこととかタバコのこととか」


「そ、そんなの隠れて誰でもやってるぜ?なにがひみ、ヒィっ!」

両手にさらに力を込める


「…でも、学校のAクラスやBクラスの人たちの目にはいったら大変だよね。だってあなたたちは所詮Eクラスの雑草でそれより上の人たちの邪魔をしちゃいけないもの。それが学園のルール、私たちの世界のお約束ですものね」


瞬時に男の目が変わる

そんなことになったら男は学園追放だけではなく家からさえも縁を切られる。親が格上の家に刃向かってまで自分達を守ってくれるとは考えられないのだろう


「じゃあさっそくお願いねセンパイ ――逃げれるなんて思うなよ」


さらに力を込めると男は白目を剥きながら夢の世界へといってしまった









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