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抱えている問題と疑問

二週間近く投稿出来ず申し訳ありません

今回は問題及び疑問の解決です。


 ウィストリアの賓客用の部屋。


 上質な素材で作られた家具や調度品に囲まれている。落ち着かん。


 現在この部屋にいるのは、私と魔人となった私の有り余る魔力を用いて実体化させたアルサクス。


「まずは、今現在抱えている問題を一つずつ解決していこうか」

「ふむ、では僕も相棒として助力しよう。僕の持っている知識を少々提供しようじゃないか」

「なんで少々? 相棒なら持ってる情報は全部提供しなさいよ」

「断る。楽しみが減るじゃないか。答えは己で掴み取るんだね」


 使えねぇなこのクソ魔王。

 まあでも少々でも情報提供が望めるのならマシか。


「今抱えてる問題は三つ。

一つ、この魔人化を治す術。

あと二つは問題というより疑問かな。

二つ、過去に勇者が異世界から召喚された事はあるのか。

三つ、この刀はなんなのか。そしてどうしてアンタがこの刀に宿ってたのか」


 アルサクスには言っていないが、問題はもう一つある。

 まず、そのアルサクスに隠している一つ目からだ。

 一つめの問題。

 元の世界に帰る術の捜索。

 これは迅速に対応しなければいけない訳ではない……が、絶対に見つけ出さなければならない。

 まあもしかしたらこの世界に帰還用の魔法があるかも知れないけど………多分ないだろうな。

 仮にあったとしても、この国の人間はそう易々と帰しはしない。


 二つめの問題。

 これは最優先事項だ。

 魔人化の解除。

 魔族憎しのこの世界において、私は敵以外の何物でもない。

 魔人になった過程など関係無い。魔族なら滅する。

 アルサクスはこの世界に魔人と人間を区別する術はないと言った。

 だが生物、とりわけ人間は敏いものだ。たとえそれが魔族であると認識出来なくとも、自分と違う部分に気付いた瞬間に疑問を抱く。

 ヘタしたら訳わかんない事で敵対されそうだ。

 今の私ならどうにかできるだろうが、そんな状況には陥りたくない。基本的に平和主義だから。


 三つめ。

 過去に勇者が召喚された事はあるのか。

 まあその勇者が何をしたかはどうでもいい。重要なのは先代勇者達のその後についてだ。

 アルサクスの情報次第では、一つ目の問題は解決だ。

 まぁ、でも……多分アルサクスも解決するだけの情報は開示しないだろうなぁ。

 魔王を倒したら元の世界に帰れますよって都合のいい事にはならないだろうし。

 四つめ。何故アルサクスの魂がこの刀に宿っているのか。

 というより、何故日本にしか存在しないはずの日本刀があるのか。




「ふむ。君の疑問は分かった。しかし、魔人化解除は不可能だ」

「いーや嘘だ。絶対にあるね。というか、なきゃ困る」

「そもそも魔人化とは、僕の前の前の魔王……つまり先々代が作り出した方法だ。魔人化した人間は魔人化させた主に対し、絶対の忠誠心を持ったそうだ」


 つまり……魔人化した私は、こいつに絶対の忠誠心を持ってるのか?

 こいつ、端から私を手駒にするつもりだったのか?


「何を考えているかは大体想像はつく。だが安心したまえ。絶対の忠誠を誓わせるには魔力以外に血液も必要だ。魔力は体内で魔人化した宿主の魔力に変換されるが、血液は違う。簡単に言えば魔人化した人間は己を魔人へと変えた主の血によって自我ある下僕となる。この人間の魔人化は、先々代が人間界の勝手な都合やいさかいで殺された不幸な人間を復活させる為に編み出した。本来は死体に己の魔力と血液を流し込むのが正しい用途らしい」

「魔王にしては随分人間に尽してるじゃん」

「先々代は人間が好きだったようだ。人間界から勇者が送られた場合、勇者を説き伏せて人類と共存しようと考えていたらしい。結果的には失敗したようだがね。その後、忠実な部下の手によってその人間魔人化の方法は隠匿された。っと、話が脱線したね。その魔人化は、誰に施したとしても、最大施術者の半分までの力しか持たない。なのに君は、全盛期の僕と同等レベルの力を持っている」

「え?それおかしくない? てか私って今どのくらい強いの?」

「だから言っているだろう? 僕ですら驚いてるんだ。理由は分からないが、僕の時代の魔界4強と言っていい。明確には分らないが、小さな町ひとつなら半日足らずで滅ぼせるんじゃないかな」


魔人化問題解決どころか新たな謎が生まれた。とんでもねー謎が。


「さて一つ目はこれで解決。二つ目いこうか」

「いやいやいや解決してないよ。解決するどころかとんでもない謎が生まれたよ」

「それについてはこれ以上考えてもしかたない。僕にすら分からないからね。さっさと二つ目に移ろうじゃないか。

二つ目の問いだが……答えはYESだ。自分の知っている中で、この世界に召喚された勇者は君たちを除いて3人。その内一人は……君たちと同じ世界から来た人間だろう」


 やはり、過去この世界に勇者が召喚された。しかもその一人が地球出身て。


「なら、その勇者がその後どうなったか知ってる?」

「知っている………が、それについて教えるつもりはない」

「なんでそこ隠すわけ? 教えて、教えなさい、教えろ」

「もはや頼んでもいないね。てか軽く脅迫してるね。悪いがこれは僕のプライバシーに関わる事だ」


 ち、肝心な時に使えねぇなこのクソ魔王。


「はい二つ目はお終い。以上で君の疑問に答えたわけだが、君はこれからどうするつもりかな?幼馴染の勇者君と魔王退治するのかい?」

「は? 魔王退治? するわけないじゃんめんどくさい」


何故見ず知らずの他人の為に命をかけにゃならんのや。そこまでお人好しじゃないっつの。


「まあでも、魔界には行こうと思ってる。今は魔人だから人間界にいる訳にはいかないだろうしね。もしかしたら戦争終わらせられるかもだし」

「というと?」

「要は魔族が人間界に侵攻しなきゃ良いわけだから、人間と魔族間で不可侵条約を結ばせればいいんじゃないかな」

「は?」


 アルサクスは口をあけてアホみたいな声を出す。


「そうすれば魔王を倒す必要なんてない、労せずみんな幸せってね」

「…………なるほど。しかしそう簡単にいくものかな?」


 いかないだろうな。

 けれど、魔王を倒すだけじゃ真の解決にはならないのも事実。


「魔族にも穏健派とかいるっしょ。もし魔王が話の通じない脳筋バカなら別の手を考えればいい。とりあえず今やることは……お勉強かな。この世界の歴史だったり魔法の勉強だったり。色々知識が必要だし」

「知識なら僕がいるだろう?」

「いやそっちの知識もいるけど人間界の知識もいる。そんで、準備が整ったら………」

「整ったら?」

「国王とお話しようか」




 翌日。


「おーい夏姫、入るぞ?」


 説明を聞こうと客室に訪れた冬樹。


「あれ? いない」

「いかがされました、フユキ様?」


 夏姫の部屋を覗く冬樹を、ローラが声をかける。


「あ、ローラちゃん。夏姫がどこにいったか知ってる?」


 すっかり打ち解けたのか、呼び方や話し方が少々崩れたものになっている。


「ちっ。あの方なら昨夜遅くに図書館に入られましたよ」


 丁寧に説明するローラ。舌うちが聞こえたのは気のせいだろうか。


「そうか、じゃあ案内してくれるか?」

「はい! お任せ下さい!!」


 満面の笑みで答えるローラ。その頬は赤色に染まっている。

 さっそく異世界で女を落としたようだ。



 歩いて10分。


 冬樹はノックもせず扉を開いて入室する。


「おーい、夏姫?」


 室内をキョロキョロ見回し、夏姫を探す。

 夏姫は図書館の隅で分厚い本を片手に何かにもたれて寝ていた。


 ここにいたか。何してんだ?

 と言おうと近づいて、夏姫がもたれていたモノの正体に気付く。


 男だった。銀色の髪の整った顔をした男が本を読み、その背中に寄りかかって夏姫が眠っていた。


「ん?ああ君か。ナツキなら寝ているが、起こそうか?」


 冬樹に気付いた男は柔らかな笑みを浮かべて冬樹に喋りかける。


「……お前、人間じゃないな。ここでなにしてる?」

「神眼も使ってないのに僕が人間でないと見破るとはね。君の眼に僕がどう映っているのかは知らないが、僕は敵ではないよ。このお姫様の相棒だ」

「相棒ってどういう事だ?」

「ふむ。ナツキ、起きてくれ」


 男は少し考えると、夏姫に声をかけて肩を揺する。


「ん……はっ!?」


 揺すられた夏姫は薄くまぶたを開くと、眼を大きく開けて跳ね起きる。


「寝てた!? あれ? この本どこまで読んだっけ!?」

「エリステア大戦の辺りだね」

「……ああ、あれか。あ、魔法の勉強基礎しか出来てない。ん?なんで冬樹いんの?」

「今来てね。僕と君の関係に関して説明してくれるとありがたい。君が説明した方が彼も納得するだろう」

「ああそう言えば説明するって言ってたっけ? それ後にしてくれない? ちょっと用事あるから」


 夏姫はさっさと図書館を出て行った。

残されたアルサクスと冬樹、アルサクスはため息をつき説明を始めるのだった。

次回、アホ国王VS毒舌転成魔人の交渉劇。

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