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伽藍堂の少女  作者: 黒原 鳴
本編
3/3

※2

 考え事をしていると、時はすぐに過ぎるものだ。

 いつの間にか着いていた家、鍵のかかった扉を乱暴に解錠し中に入る。

 いい加減、この独りも慣れないものだろうか。

 それとも孤独とは慣れるものではないのかもしれない。

 家の中には誰も居ない。

 家族の絆なんて無いに等しい。

 母親は借金の返済に明け暮れ、生活費のみをテーブルに置いて姿を見せない。

 父親は知らない。興味もないし。

 一度母に聞かせてもらったが、どうやら最悪の人間だったらしい。

 まぁ、父親がいない時点でそんな事だろうとは思っていたが。

 そんな奴に引っかかる母も母だ。

 自業自得、借金を払うのもある意味道理とも思える。

 そもそも父親は母親に借金を着せるために結構したようなものなのだろう。

 自分の親を見ていると、恋愛なんぞぴくりとも食指が動かないのも仕方あるまい。

 愛には絶望しているのだ。

 恋は下心、愛は真心とはよく言ったものだ。

 その真心がいつ悪意に変わるとも知れないのに。

 それを皮肉と受け取るなら、なるほど言い得て妙でもある。

 弱肉強食、食われた母と食った父。

 因果応報、借金が私に回ってこないだけまだマシだ。


 そんな冷めきった家庭で産まれ育ったからだろうか。

 ……心が寒い。

 穴があいたように、スースーと風が通り抜けていく。

 思春期特有の感情。ネットにはそう書いてあった。

 もちろんネットの情報を全面的に信じるわけではないけれど。

 虚無感などではない、穴が空いているのだ。

 何者にも埋められない、底なしの風穴が。

 無論、幼少期に注いでもらえなかった愛情を大人になって他者に求めるというアレが発生しているわけではない。

 寒いのだ。

 思春期というのは大抵のことを穏便に、かつ闇に葬り去るために生み出された言葉だと思う。

「思春期だから仕方ないじゃない」

 一度は聞いたことのあるセリフだろう。

 身に覚えのある人もいるかもしれない。

 それによって泣き寝入りした人、高笑いした人も多くいるのだろう。

 まるで悪魔の言葉だ。


 もしかしたらその悪魔の言葉一つで私の虚無感は言い表せるのかもしれない。

 もしそうだとしても、私が虚無感を感じているのは事実だ。

 どうしようもない、解決策のない考え事。

 空回りし続ける思考は少しずつ私の生きる意味を奪っていくのだ。

 ゆっくりと、着実に。


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