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伽藍堂の少女  作者: 黒原 鳴
本編
2/3

※1

 

 本屋に足を運んでみた。


 理由は何故と聞かれても、なんとなくとしか言いようがない。

 暇だったから、それだけなのだ。

 特に読みたい本もマンガもある訳ではない。

 あまりものに執着しないタチなので、自分の中で一時流行って買ったものもすぐに古本屋行き。

 そんな私はただただ暇をつぶすためだけに近所の本屋に来ていた。


 割と大きめの書店で品揃えは豊富。

 頭の中で買いたいものを検索してみるも、一件もヒットしない。

 半ば諦めた仄暗い気持ちを抱えつつ、辺りを見渡し、面白そうな本に目をつけていく。

 少しだけ手に取って、飽きればすぐ次に行く。

 わずかに惹かれる本たちもあったが、お金を出して買いたいと思うものでもない。


 やはりだめか。

 歩き回ることすら億劫に感じられる。

 こうなったら暇を潰すどころではなくむしろストレスになりかねない。

 今更ながらもそんな自分に嫌気を感じながら、重い足取りで家へと向かう。


「また今日もか…」


 昔の私はもう少し素直だった。

 純粋に物事を見て、真っ直ぐだった。

 でもそれはあくまで過去形な訳で。

 周りは何も変わらない。背が伸びたとか彼氏が出来たとかそんなのじゃなくて。

 私一人がませた訳でも、大人ぶっている訳でもない。

 単純に、疲れたのだ。


 周りの声は頭に響く。

 女子も男子も関係なく、はっきり聞こえない声は全て自分の悪口を言っているようで。

 クラスでも仮面をかぶり、いつしかそれを受け入れてしまった。

 別に悲観ぶってるわけでも悲劇のヒロインになりたいわけでもない。

 嫌気が差したのだ。

 全てが面倒で、物事を斜めにしか見れない自分に。

 本音を言えば恋だってしてみたい。

 親友だって欲しい。

 でも、そこまでしてまで叶えたい夢でもない。

 今の私が一番大切なのは平穏だ。

 何もない、何もしない。


 それだけを望んで。

 望んだ先に何があるのかは知らない。

 この選択を後悔することになっても構わない。

 その先がたとえ、光の見えない闇の沼だとしても。



 そんなことを考えながら、ぽつぽつと家への道のりを歩く。

 ほんと、いつからだろう。

 口元に自らを嘲笑するような笑みを浮かべたまま思考を続ける。

 少しずつ、少しずつ、思考の海に嵌って行く。

 そして最後に究極の質問へとたどり着くのだ。


『自分の生きている意味は?』


 誰かが言った。

 人は何らかの役割を果たすために生まれてきたのだと。

 それはまるで、私達は世間を動かす歯車だと言っているようで、私は嫌いだ。

 でもその通りだと思う。

 結局人一人が足掻いたところで世界は回る。

 回り続ける。

 それなら私に世間を回す力など無いに等しいのではないのか。

 どこかしらにはまっているのだろう。

 しかしその歯車は本当にいる部品なのか?

 その歯車が欠け落ちたとしても、世間というからくりは動き続けるのではないか?


 質問の答えは、まだ出ていない。


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