1/10
短い詩1
1、虜
恋し桜よ
わたしを薄紅に染め上げて
愛しき緋桜よ
わたしを深紅に高ぶらせて
淡き満月よ
わたしを朧に輝かせて
そして
あなたを虜にするの
2、無題
悪意に満ちた月は嗤う
善意に満ちた陽は泣く
地球はその狭間で翻弄される
3、常夜の居酒屋
そこに集まる人々は 語り酒を飲む
誰がきても構わないし気にしない
懐かしき思い出の花が咲く
誰かの生前の偉業自慢
夢中になり陽気に笑い
本当に和気あいあいと
ただし 悪口下品暴力はご法度
そのまま店主に放り出されて出禁
二度と入れない
4、雨上がりの花
雨上がりの夕暮れに咲く花は
白く小さくかわいらしい
無数の花びらは朱に染まり
葉は陽光の水滴を弾き放つ
爽やかな甘い香り漂わせ
虫たちを呼ぶ
夜とともに眠りにつき
わずか数日で枯れる儚さ
5、夜黒の眠り姫
静寂の腕に抱かれし 夜黒の眠り姫
黒曜石の棺を寝台とし
黒薔薇に包まれて眠る
濡羽色の髪と白磁のごとき白肌
精緻な漆黒のドレスをまとう
眠り姫を目覚めさせる 白馬の王子はいない
眠り姫を愛でるは 闇の死神
死神の鎌で首を刈り取られ
鮮血の接吻で目覚める