表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来の約束  作者: 蔭翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/65

62 見えざる反発

62 見えざる反発


 陽乃市役所の一室で、試験導入の次なるステップに向けた会議が開かれていた。


「企業側へのインセンティブを強化することで、導入へのハードルを下げることができます」


 悠人が示した資料には、補助金制度や税制優遇の案が並んでいた。


「ただし、これを実現するには、政府の追加予算が不可欠です」


「なるほど……」


 市長の真鍋は腕を組み、深く考え込んだ。


「今のところ、政府側の反応はどうなっている?」


「担当部署とすでに数回調整を行っていますが……」


 葵が、やや歯切れ悪く答えた。


「政府内でも意見が割れているようです。少子化対策としての意義は理解されているものの、予算を大幅に増やすことに慎重な声も多いと」


「まあ、そうだろうな」


 真鍋は苦笑した。


「ただでさえ財政は逼迫している。少子化対策は重要課題だが、目に見える即効性があるわけではない。予算を引き出すには、さらに強い根拠が必要になるだろう」


「例えば、どういうものが必要ですか?」


「具体的なデータだよ。試験導入によってどれだけの効果が出たかを、明確な数字で示すことだ」


 悠人と葵は頷いた。


「そうですね……。企業側の労働生産性の変化や、従業員満足度の向上などを数値化できれば、交渉の材料になります」


「その通りだ。ただし……」


 真鍋の表情が険しくなった。


「どうやら、一部の政治家や財界の中に、この制度自体を快く思わない勢力がいるらしい」


「……!」


 悠人と葵は驚いた。


「つまり、反対派が動き出しているということですか?」


「そういうことだ。特に、従来の働き方を重視する保守派の経済界の一部が、この制度に否定的な意見を持っている」


 真鍋は手元の資料をめくった。


「先日の会合でも、ある経済団体の代表が『このような制度は企業の競争力を削ぐ』と批判していたそうだ」


「……彼らは、どのような対策を取ろうとしているのでしょうか?」


「まだはっきりとは分からないが、制度の足を引っ張るような圧力を政府にかける可能性がある」


 悠人は苦々しい表情になった。


「つまり、試験導入の結果が良くても、政治的な理由で潰される可能性がある……ということですね」


「そういうことだ。しかし、我々が諦める理由にはならない」


 真鍋の目が鋭く光る。


「むしろ、ここからが本当の勝負だ」


 悠人と葵も、改めて覚悟を決めた。


「まずは、データの収集を急ぎましょう」


「ええ。そして、政府への交渉も並行して進める必要がありますね」


 しかし、この時、彼らはまだ知らなかった。

 すでに、裏では彼らの動きを阻止しようとする勢力が、具体的な行動を起こし始めていることを——。



---


次回は、反対勢力の暗躍と、悠人たちが直面する新たな壁をじっくり描きながら、物語を進めていきます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ