✅ 田村議員との直接対決が始まる? ✅ 市民を巻き込んだ新たな戦略 ✅ 悠人と葵、試される信念
第6章 試験プログラムの進行(続き)
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39 市民の声を集める
翌日、悠人と葵は真鍋市長とともに、市役所の会議室に集まった。テーブルの上には、市民から寄せられた意見の書かれた分厚い資料が積まれている。
「ここ数週間で、市民からの意見が急増しています」
市役所の職員が、集計データをスクリーンに映し出した。
「試験プログラムに対する賛成意見が全体の78%、中立が15%、反対が**7%**です」
悠人はスクリーンを見つめながら頷いた。
「やはり、大半の市民はこのプログラムに希望を持っているんだな」
真鍋市長も腕を組みながら答える。
「問題は、残りの7%の反対派だ。中には、政府の影響を受けた組織的な意見もあるかもしれない」
葵が資料をめくりながら言う。
「でも、純粋に不安を抱えている人もいるはずです。このプログラムが本当に持続可能なのか、今の制度を大きく変えることにリスクはないのか……そういう不安を払拭することが大事だと思います」
「……そうだな」
悠人は考え込んだ。
「市民の声をもっと可視化するべきだ。SNSや動画配信を使って、実際にこのプログラムで恩恵を受けている家族の声を発信していこう」
「動画か……確かに、文字だけよりも伝わりやすいですね」
葵は少し考えてから、思い切ったように言った。
「じゃあ、まず私がやります」
「え?」
悠人と真鍋が驚いて彼女を見る。
「私は、この街で子育てをしながら働く一人の親です。試験プログラムの恩恵を直接受けている立場として、実際にどう変わったのかを話せば、もっと多くの人に届くはずです」
彼女の瞳には強い決意が宿っていた。
「……確かに、それは説得力があるな」
悠人は納得し、真鍋市長も微笑んだ。
「よし、それでいこう。まずは葵さんのストーリーを発信し、市民の声を次々と集めていく」
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40 葵のスピーチ
数日後、陽乃市役所の広場で、市民を集めたイベントが開かれた。
葵は、マイクの前に立ち、目の前の人々を見渡した。
(……大丈夫。私はただ、私の経験を話せばいい)
彼女は深呼吸し、静かに話し始めた。
「私は、双子を育てるシングルマザーです。以前は、子育てと仕事の両立がとても大変でした。保育園の待機児童問題、職場の理解不足、経済的不安……そのすべてが、私にとって大きな壁でした」
聴衆の中で、小さく頷く人々がいる。
「でも、この陽乃市の試験プログラムが始まって、状況は大きく変わりました。柔軟な働き方が認められ、育児支援AIの導入で子どもの成長管理もサポートされるようになりました。地域の人たちが協力し合い、『育児は個人だけの責任ではなく、社会全体で支えるものだ』という考えが広まっています」
会場の雰囲気が変わった。誰もが真剣に彼女の言葉を聞いている。
「この街は、私たち親にとっても、子どもたちにとっても、希望の場所になりました。でも今、この試験プログラムは存続の危機にあります」
葵は一度言葉を切り、聴衆を見つめた。
「皆さんの力が必要です。私たちが未来を選べるように、このプログラムを守るために、一緒に声を上げてください!」
その瞬間、会場から大きな拍手が巻き起こった。
人々の中には涙ぐむ母親の姿もあった。
(……伝わった)
葵はそう確信し、マイクを握る手に力を込めた。
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41 動き出す市民たち
翌日、SNSには「#陽乃市の未来を守ろう」のハッシュタグが溢れ、動画は瞬く間に拡散された。
陽乃市で暮らす親たちが、次々と自分たちの体験を投稿し始める。
「この街に来てから、初めて仕事と育児の両立ができるようになった」
「うちの子が、地域の人たちに見守られながら育っているのが嬉しい」
「もしこのプログラムがなくなったら、元の生活には戻れない……」
市民の声が、次第に大きな波となって広がっていく。
一方で、政府の動きも加速していた。
「……田村議員が、市長との会談を正式に申し入れてきました」
真鍋市長の報告に、悠人と葵は緊張する。
「いよいよ、正面からの交渉になるってことですね」
「だが、これはチャンスだ。市民の意志を示せば、政府も無視はできないはずだ」
悠人は拳を握りしめ、決意を固めた。
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次回予告
✅ 田村議員との直接交渉!
✅ 政府の本当の狙いとは?
✅ 試験プログラムの未来をかけた戦いが始まる!
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