✅ 田村議員の本当の狙いとは? ✅ 試験プログラムの本格的な始動 ✅ 悠人と葵、そして市民の決断
第6章 試験プログラムの始動(続き)
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35 見えない圧力
説明会から数日が経った。
街の空気は、少しずつ変わり始めていた。
説明会に参加した市民の間では、試験プログラムについて前向きに話す人が増えていた。
「この街なら、変われるかもしれない」
「子育ての負担が減るなら、もう一人産むことも考えられる」
そんな声が、徐々に広がっていくのを悠人は感じていた。
しかし、同時に——
目に見えない圧力も、静かに忍び寄っていた。
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「深澤さん、ちょっといいですか?」
ある日の昼下がり、悠人のデスクに陽乃市の財政課の職員がやってきた。
彼は気まずそうに書類を差し出す。
「この試験プログラムに関する補助金の申請ですが……財務省の審査で、一部が保留になりました」
「……どういうことですか?」
悠人は眉をひそめる。
財務省の補助金は、このプロジェクトの重要な資金源の一つだった。
「審査基準の厳格化、ということらしいです」
「今までは問題なく通っていたのに?」
「ええ。でも、突然チェックが厳しくなったんです」
悠人は、直感的に何かがおかしいと感じた。
(これは……偶然なのか?)
財政課の職員も、不安げな表情をしている。
「市の財政でやりくりできる範囲ならいいのですが、補助金が削減されると、企業の支援金に頼ることになり……そうなると、企業側の意見がより強くなります」
(つまり、企業の意向次第でプログラムの方向性が左右される可能性が高くなる……)
悠人は、田村議員の言葉を思い出していた。
「市の財政にも傷がつくし、企業との関係にも影響が出るかもしれませんよ」
(まさか……)
悠人の胸に、嫌な予感が広がっていく。
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36 葵の焦燥
同じ頃、葵もまた、問題に直面していた。
彼女が推進していた地域支援型の託児制度に関する説明会が、急遽延期になったのだ。
「担当課から、『もう少し検討が必要』って言われたの」
カフェで悠人と向かい合いながら、葵はため息をつく。
「でも、内容はすでに詰めてあったはずですよね?」
「そう。でも……上からの指示で、一旦ストップになったって」
葵の表情は曇っている。
「悠人さん、これ……何かの圧力がかかっているんじゃない?」
悠人は、コーヒーカップを置いて、小さく頷いた。
「俺も、財務省の補助金が突然保留になったって聞かされたところだ」
「……やっぱり」
葵の手が、ぎゅっと拳を作る。
「これって、田村議員が裏で動いているってこと?」
「確証はないけど……可能性は高い」
悠人は、静かに息をついた。
「問題は、田村議員が何を目的にしているのか、だ」
試験プログラムを潰したいだけなのか、それとも——。
悠人の胸には、次第に疑念が広がっていく。
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次回予告
✅ 田村議員の真の狙いが明らかに?
✅ 試験プログラムの存続をかけた決断
✅ 悠人と葵の信念が問われる瞬間




