第8話 「昆虫騎士団のヒト達って毎日こんなことしてるの?」
「嬢ちゃん達はどうしてここへ来たんだ?まぁ、十中八九オレに用があって来たんだろうけどな!」
その人物は4人に対し、話しかけながらも、腕を曲げ上腕二頭筋を見せつけたり、そのまま両手を頭の後ろに組み、腹筋をアピールしたりと様々なポーズをとっていた。
4人全員がそのポーズを見せつけられ、苦笑いしかできない中、だれが最初に話しかけるかを決める雰囲気となり、桜、ひまわり、ビオラが一斉にヒガンバナの顔を見る。
少し顔をしかめながらも、仕方ないかという様に小さくため息をつき、話しかける。
「私達クロカタゾウムシってヒト探してるんですけど、もしかして貴方がそうですか?」
「おっ!いかにも‼︎オレが昆虫騎士団12幹部の1人、クロカタゾウムシだ!ちなみにオレは幹部の中でも下から数えた方が早いぐらいの実力だがな!ファッッハッハッ!」
豪快に笑いながらも腕や足を動かして新たなポーズをとるクロカタゾウムシ。
一応、まともな会話は出来そうだと感じたひまわりが質問を投げかける。
「えぇ〜と、さっきからしてるそのポーズは何なんですか?」
「いい所に気がついたな嬢ちゃん!これはサイドトライセップスって名前だ!」
そう言いながら手を後ろに組み上腕三頭筋に力を入れてアピールをしている。
「人類が滅びる前、男達はボディビルという、己の筋肉を見せつけ、その大きさや美しさで序列を決めていたらしい。オレもそれを見習って、こうして日夜様々なポーズを研究してるってわけよ!」
「昆虫騎士団のヒト達って毎日こんなことしてるの?」
「絶対そんなことないよ!あのヒトがちょっとおかしいだけだから!」
ひまわりが小声で呟いた疑問にビオラが激しく否定する。
これ以上この話は続けさせまいと、今度はビオラがクロカタゾウムシに質問をする。
「昆虫騎士団の幹部が何しにここへ来たの?まさか、今更仲良くしましょって話をしに来た訳でもないでしょうし」
「見た目の割に強気な嬢ちゃんだな!まっ、隠すほどのことじゃねえし教えてやるよ。ベゴニアが持ってる八尺瓊勾玉を奪ってくること、それがオレがここに来た理由だよ」
その言葉を聞いた瞬間、4人全員の目つきが変わり、戦闘態勢に入った。
ひまわりは拳を前に出し構え、ヒガンバナは両手を開き腰を少し低く落とす。桜は左腰の刀に手をかけいつでも抜ける体制をとり、ビオラはアサルトライフルの銃口をクロカタゾウムシに向けた。
「おいおい、いきなりどうした?別に嬢ちゃん達に何かしようって訳じゃねえんだぜ。オレは勾玉さえ手に入ればそれでいいし、無駄な殺生は嫌いだからな」
4人の剥き出しの敵意に一切怯むことなく、むしろ余裕の表情で答える。その際もボディビルのポーズを止めることなく続けていた。
その姿を見て警戒心を強めた桜が問いかける。
「ずいぶんな物言いですね。アナタに私達が殺せるとでも?」
「ああ、殺せるさ」
あっさり答えると、これまで取っていたポーズをやめ、両腕を組み話し始める。
「ちょっと試したら分かるだろうが、・・・大人しくベゴニアの所まで案内してくれるなら、さっきも言った通り何もしねえさ。ただ、それが嫌って言うんなら、オレも手を出すしかなくなるな」
これまでの明るい表情とは一転、無表情で機械的に淡々と話すクロカタゾウムシ。
少しの沈黙の後、最初に動いたのはビオラだった。