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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第一章 曼珠沙華
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第6話 「絶対あれ楽しんでたでしょ?」

 アリマキのむれを難なく倒した4人は、すぐにその場を後にし、浅草寺までの道のりを歩いていた。


「結界の外に出ていきなり襲われるとは思わなかったなー」


 両手を頭の後ろで組んで歩くひまわりが話し始める。


「ビオラちゃんがいきなり撃ち始めてアタシもびっくりしちゃったもん」



「アイツら、体液をすすりたいとか言ってたし、最終的に襲いかかってきたから最初から撃って正解だったでしょ?」


 名前を出されたビオラがぶっきらぼうに返事をする。

 その顔には悪気など一切なく、さも当然のことをしたまでだと言いたげな表情をしていた。

 

「てゆーか、ひまわりもノリノリで突っ込んで行って瞬殺してたじゃん!絶対あれ楽しんでたでしょ?」


 ひまわりの方を見上げながらビオラが続けざまに言い返す。

 図星をつかれたひまわりは、慌てて目線を逸らし、右頬をかきながらどこか気まずそうに声を出した。


「えぇ〜〜と、まぁ〜〜、楽しんでたかどうかと聞かれたら、、、否定はできないというか〜、そのーー。はっ!」

 

 歯切れの悪い口調から一転、何かを思い出したかのように両手をパンっと叩き、横を歩く桜とヒガンバナに目線を向ける。


「そういえば!、桜ちゃんもヒーちゃんもさっきは大活躍だったね!。桜ちゃんの口上かっこよかったし、ヒーちゃんは相手が4人もいたのにすぐやっつけちゃってホント凄かったなー!」


 叩いた両手をそのままにして片目を閉じ、少し困った顔で2人を見つめる。

 話題を変えて欲しいと目線で訴えかけ、それを察した2人は少し見つめ合った後、微笑し、仕方ないなというふうに桜が話を合わせる。



「ありがとう、ひまわりさん。(わたくし)としては、今思い返せば少し恥ずかしい名乗りだと思っていましたが、かっこいいと言っていただけて良かったです」



「確かにさっきの桜お姉ちゃんはかっこよかったね!私も今度アイツらみたいなの出てきたら真似する!」


 桜の名前が出たとたん、ひまわりの話など忘れたかのように、すぐに視線を桜に移し褒め始めるビオラ。褒められて嬉しいと思う反転、口上を真似すると言われて少し恥ずかしい気持ちが混ざり、なんとも言えない微笑みで返す桜。

 それを誤魔化すように、今度は桜がヒガンバナに話題を振る。



「ひまわりさんの言うとおり、ヒガンバナさんの活躍もお見事でしたね。あれだけの人数を相手にして、余裕の勝利を収めるのは中々出来ませんよ」



「ひまわりちゃんも桜ちゃんも褒めすぎだよー。私はただ、自分の出来ることをやっただけだし、あれくらいの相手ならみんなも余裕で倒せてたよ」


 謙遜はしているが、満更でもない笑みを見せるヒガンバナ。

 その後も4人がそれぞれ先ほどの闘いの感想を話しながら歩く。

 

 結局、襲われたのは結界を出た直後のみで、それ以降は敵が現れることもなく、4人は浅草寺の風雷神門の前までたどり着いた。



「ここが浅草寺か〜!なんかでっかい提灯みたいなのに雷門って書いてある!」


 ひまわりがおでこに左手をあて見上げながら話す。初めて見た風雷神門を前に気分が上がり、目を大きく見開きながらはしゃいでいるようだ。


「正式な名称は風雷神門と言うんですよ。かつて人類が、農作物が豊かに実るようにと願い、風雨を司る神、風神と雷神を祀るために作ったのです」


 同じく桜が風雷神門を見上げながら答える。その表情はどこか寂しげで、かつて人類が栄えていた時代に思いを馳せているようだった。


 少しの間、沈黙が続く。

 

 桜は気持ちを切り替えるように浅く目を閉じ、短く息を吐く。再び目を開き、真剣な眼差しで正面を向く。左腰の刀に手を当てて、いつでも抜刀できるよう構える。


 その姿を見た3人も同じく気を引き締めるように、各々が準備をしだす。

 ひまわりとヒガンバナは結界を出る前と同じような構えだったが、ビオラは拳銃ではなく、背負っていたアサルトライフルを下ろして正面に構える。


「あれっ?、ビオラちゃん今回はそっち使うんだね」


「ふっふーん!今回の敵は厄介だって言ってたから、()()で早々に片付けちゃおうと思って!」


 ビオラの武器に気づいたヒガンバナが話しかけると、ビオラは自信たっぷりな表情で答える。


「それじゃあ皆んな準備できたみたいだし、行こうか!」


 ひまわりが声を上げると3人も頷き、全員が横並びで門をくぐり歩き始める。

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