第5話 「許せねぇ・・・!こんなひでぇことするなんて頭おかしいだろ!」
4人が結界の外に出てすぐ、待ち伏せされていたのかのように、10人ほどのアリマキのむれに囲まれる。
「ヒャッハー!女だーーー!!痛い思いしたくなきゃ大人しくしギャン!!」
パーン!
先頭に立っていたアリマキが言い終える前に、ビオラが持っていた拳銃でアリマキの眉間を撃ち抜いた。
「トゥシュ、ドゥヴァ、イェデン」
パンッ! パンッ! パンッ!
一発目を撃ち込んだビオラは続け様に、胸、鳩尾、股間へ3発の弾を放つ。計4発撃たれたアリマキは白目を向いてその場に倒れた。
「あっ兄貴ーーー!!!!」
撃たれたアリマキの近くに立っていた子分と思われるものが、倒れ込んだ兄貴と呼ぶ者を抱きかかえながら叫ぶ。
「てめぇ!!兄貴になんて事しやがんだ!喋ってる時に撃つとか非常識にもほどがあんだろ!」
「どうせ私達を捕まえて碌でもないことしようとしてたんでしょ?もし違ってたら謝ってあげるわ」
叫ぶアリマキに銃口を向けたまま、無表情で話すビオラに対し、怒りの目線を返しながらアリマキは反論する。
「そんなことあるわけねぇだろ!!俺たちはただお前らを捕まえてその体液をすすりたかっダンッ!!」
パーン!
最後まで話すことなく眉間に弾を撃たれたアリマキは、兄貴と呼んでいた最初に撃たれたアリマキの上に覆い被さるように倒れ込む。
撃ち終えたビオラは拳銃を下ろし、倒れた2人のアリマキを汚物でも見るような目で睨みつける。
「やっぱり話聞かなくて正解だったじゃん。昆虫騎士団とは名ばかりの変態集団ね」
吐き捨てるように呟くビオラに、これまでの状況が急展開すぎて動けなかった別のアリマキ達が我に返ったように次々とまくし立てる。
「よっ・・・よくも同胞を2人もやってくれたな!」
「許せねぇ・・・!こんなひでぇことするなんて頭おかしいだろ!」
「俺たちはただお前らの体液をすすりたかっただけなのに!!」
ここぞとばかりに騒ぐアリマキ達に対し、桜が一歩前に出て口を開く。
「アナタ方が野蛮なことは十分理解できました。こちらとしてもそのまま帰るのであれば追うような真似は致しません。ただ、まだ争う意志があるならば・・・・・・、容赦なく斬り伏せます!」
左腰の刀を抜き、正面に構えた桜。
一瞬怯むような姿を見せたアリマキ達だが、先頭にいた者が自らを鼓舞するように叫ぶ。
「かまうこたぁねぇ!!やっちまえー!!」
その声を合図に一斉に襲いかかるアリマキ達。
桜は小さくため息をつき、刀を構え撃退するための姿勢を見せる中、ひまわりが我先にと駆け出し、マリマキの群れに突っ込んでいく。
「アタシも張り切っちゃうよー!平安初段‼︎」
先頭のアリマキがひまわりを殴ろうと拳を出したが、ひまわりが左足を前に出し低く構え左腕で殴りかかってきた拳を払いのける。
その勢いのまま今度は右足を前に出し強く踏み込み、右正拳突きをアリマキの鳩尾に叩き込む。
「ぐえぇっ・・・!」
殴られたアリマキはうめき声を上げながら背中を丸め膝から崩れ落ちる。
「死ねぇーー!」
ひまわりの後ろに回り込んでいた別のアリマキがひまわりの背中を狙う。
「ふんっ!」
身体を反転させ今度は右腕で相手の攻撃を払い、左拳を相手の顔面に叩き込む。
「うぅっ・・・・・・!」
顔面を殴られたアリマキは白目をむきその場に大の字で倒れる。
「いっちょあがり‼︎」
両手をパンパンと叩き、腰に手を当ててひまわりはニコリと笑った。
「刀持ってるからって調子乗ってんじゃねぇぞー!」
ナイフを持った者と棍棒のような物を持った2人のアリマキが桜を目掛けて突っ込んでくる。
「霞神楽・・・一の太刀‼︎」
2人の武器が届くより前に刀を横に振り、瞬く間に2人のアリマキを切り付ける桜。
切られた2人は桜の身体をすり抜けそのまま前のめりに倒れる。
「襲う相手は、もう少し見極めたほうが賢明ですよ」
普段通りの優しい微笑みを見せながら刀を鞘に戻し、倒れた相手に向かって喋る。
ひまわりと桜にやられた仲間を見た残りの4人は標的をヒガンバナ1人に絞り込むことにした。
「おい!武器持ちと金髪はやべえ‼︎とりあえずこの黒髪を囲って袋叩きにするぞ!」
残った4人のアリマキがヒガンバナを囲う。
「ヒガンバナちゃーん!倒すの手伝おうかー?」
少し離れた場所で拳銃を構えていたビオラがヒガンバナに問いかける。
「大丈夫だよービオラちゃん!すぐ片付けるからー!」
手を振りながら余裕の表情で語るヒガンバナ。
明らかに舐めた態度を取られたアリマキ達は怒り、各々ヒガンバナに向かって攻撃を仕掛ける。
「余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぞこのアマ!!」
棍棒を持った1人がヒガンバナの頭上に向かって棍棒を振り下ろす。
「よっっと!」
身体を少し傾けギリギリで相手の攻撃を躱す。
「まぐれで躱したって次は上手く行かねえぞ!」
別のアリマキがヒガンバナに殴りかかる。
「せいっ!」
その拳を左手で受け流し、相手の勢いを利用し一本背負いの要領で地面に投げつける。
ドンッ!!
鈍い音と共に、受け身を取ることもできず顔面から地面に叩きつけられたアリマキは、起き上がることなく気絶していた。
「これでもくらいやがれ!」
先ほど攻撃を避けられたアリマキが今度は横から棍棒を振るったが、これもヒガンバナに当たることはなく簡単に避けられてしまう。
棍棒が空振り体勢が崩れたアリマキの棍棒を持った腕を掴み、相手の肘を曲げて棍棒を頭にぶつける。
「ぎゃあ!」
自らの棍棒が頭に直撃したアリマキが悲鳴を上げ倒れる。
「よけれねえように捕まえるだけだ!」
別の1人がヒガンバナの胸ぐらを掴もうと右手を伸ばす。その手がヒガンバナに触れる瞬間、相手の手首を素早く掴み、外側にひねり小手返しを極める。
「いででででで!!」
間接を極められてその場に倒れ込む1人。
「後ろがガラ空きじゃねぇか!」
残った最後の1人が手に持った棍棒でなぐりつけようとする。
「よっと!」
「いっっだーーーー!」
ヒガンバナが手首を捻るとそれまで倒れていたアリマキが急に立ち上がった。そのまま身体を入れ替え盾のようにし、相手の攻撃を受けさせる。
ゴンッ!!
頭に棍棒が直撃したアリマキはヒガンバナが手を離すと力なく倒れ込んだ。
「兄弟ーー!!」
ヒガンバナに当てるつもりが仲間に攻撃してしまったアリマキが泣き叫ぶ。
「よくも兄弟を・・・!ぶっ殺してやる!!」
怒りで我を忘れたアリマキが突っ込んでくる。
「発勁!!」
ヒガンバナが両手を開いて重ね、突っ込んできたアリマキの胸に当て、右足を強く踏み込む。
「ゴホッ・・・!!」
強烈な衝撃がアリマキに加わりそのまま気絶してしまう。
あっという間に10人のアリマキを制圧してしまった華乙女であった。