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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第三章 春蘭秋菊

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第2話 「どうりで話が噛み合わないと思ったわ」

 正面に立った蘭から、間髪入れずに捲し立てられ、ヒガンバナたち四人は思わず足を止めた。


「ようやく追いついたわ!さっ、いくわよ」

  

 錆びた線路沿いの風が、土埃を巻き上げる。

 突然現れたその勢いに、ヒガンバナは一瞬だけ言葉を失った。


「えぇ?いくってどこにですか?」


 困惑したヒガンバナが首を傾ける。


「それはアンタ達の方が詳しいでしょ?――攫われた件よ、攫われた件!」


「……?すみません、全然話が見えてこないのですが……」


 桜が静かに口を挟むと、蘭は露骨に顔を歪めた。


「はぁ〜?ちょっと菊!どうなってんのよ!」


 蘭が勢いよく振り返る。その背後で菊は、呆れたように息を吐いた。


「まったく……挨拶もなしにいきなり連れ出そうとすれば、こうなることぐらい分かりそうですのに」


「アンタは毎回、人を煽らないと生きていけないの?てか、そっちにも話はいってるんでしょ?」


「なんのことですか?アタシ達は、ホッカイドウを目指して進んでいるだけなんですけど……」


 ひまわりの言葉に、菊はわずかに眉を上げる。


「直近で、ベゴニア様からの遣いの者は来なかったですか?わたしとそこのは、その指示で貴方達4人を探していたのですよ」


「ベゴニア様の遣い……?私達は数日前に機獣と戦って以降、誰とも会っていません」


 淡々と答えたビオラの言葉に、蘭はようやく事情を理解したように目を細めた。


「どうりで話が噛み合わないと思ったわ。この辺りを根城にしてる昆虫騎士団に、アイリスが攫われたのよ!」


その名が出た瞬間、場の空気がわずかに張り詰める。


「だから助けに行くのに、アンタ達と一緒に行動しろって言われたの!」


「アイリスさんが……?あのヒトが攫われるって、よっぽど強い敵なんですか?」


 ひまわりの純粋な疑問に、菊が肩をすくめる。 


「それも多少はありますが、……どうやらあの子、メガネを無くしてたみたいで。ほら、メガネがないとポンコツですし」


「そこまで言わなくても……」


 小さく苦笑しながら、ヒガンバナが続ける。


「でも、どうして私達も一緒に行くことになったんですか?」


「そんなの知ったことじゃないわ。とにかく!ベゴニア様の命令は絶対だし、どうせアンタ達も暇でしょ?」


「まぁ、そこまで急いでいるわけではないですが……」


 曖昧に濁した桜に、菊がわざとらしく頭を下げる。


「連れが下品で申し訳ありません。なにぶん、こういった口調でしか喋れない病気でして」


「また下品って言ったわね!この子達の前では隠せてるつもりだろうけど、アンタの方がよっぽど下品で性格悪いから!」


「自らの言動を省みることすらできないとは……。貴方の主も泣いていますよ」


「アンタみたいなのに信仰されてる方が、よっぽど不敬よ!いつもいつもーー」


「あら、貴方こそーー」


 一触即発の空気に、ビオラが慌てて二人の間に割って入った。


「わ、分かりました!行きます、行きますから!どうかその辺りで……」


「ふんっ!いい後輩を持ったことに感謝しなさい!」


「自らに言い聞かせるとは、よい心がけですね」


「アンタに言ってんのよ!」


 これ以上続けば本当に収拾がつかなくなる。

 そう判断したヒガンバナは、軽く咳払いをして場を仕切った。


「まぁまぁ!2人ともその辺りで……!とにかく、その昆虫騎士団の根城に行きましょう」


「詳細は、歩きながら教えていただけますでしょうか?」


 桜の言葉を合図に、目的地も事情も曖昧なまま、二組は同じ方向へと歩き出した。

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