第二章最終話 「良いものですね」
霞が晴れ、桜が最初に目にした光景は、ヒガンバナ、ひまわり、ビオラの佇む姿だった。
心配そうに辺りを見回す3人を目にした瞬間、力が抜け、地面に倒れそうになる。
桜の姿を確認した3人はすぐに駆け寄り、桜を支える。
「……皆さん、ご無事で……」
「桜お姉ちゃんこそ、大丈夫だった?どこか怪我はない?」
腰元で支えるビオラが、今にも泣き出しそうな顔で見つめる。
「よかった〜!桜ちゃん、急にいなくなるからホントびっくりしたんだよ〜!周りも霧がかって見えなくなるし……でも、ヒガンバナちゃんが大丈夫だって言うから……!」
桜の右肩を支えるひまわりが、いつもの調子で話し始める。
「ヒガンバナさんが……?」
桜は左側で肩をかすヒガンバナに視線を向ける。
「うん、桜ちゃんが千紫万紅を使ったのが分かったから、安心したの……!仙狐を倒して絶対に戻ってくるって信じてた!」
「そうですか……そういえば、残りの野狐はどうなりました?」
桜は周囲を見渡す。そこには、尻尾を完全に切断され、動きを止めた野狐の姿があった。
「あの霧と一緒に仙狐が消えて、動きが鈍くなったから、問題なく倒せたよ!桜お姉ちゃんのおかげ!」
桜の腰を強く抱くビオラ。もはや支えてるのか、ただ抱きしめたいだけなのか分からない状況になっている。
「それよりも桜ちゃん!上、上見て!」
ひまわりが何やら上機嫌に辺りを指差す。
「うえ……ですか?…………あっ、あぁ!」
桜が顔を上げるとそこにはーー
朝日に照らされ、悠然と咲く、桜並木が広がっていた。
どの木も凛と立ち、桜の帰還を待ち侘びたかのように、花弁を舞わせていた。
夢にまで見た景色。人の姿を得て、世界の仕組みを知った日から、どれだけ待ち侘びた事だろうか。
自身の花しか咲かせられない世界。他人にどれだけ望もうが、自分しか咲かせられない花。
桜の花を見て、感極まり、思わず涙がこぼれる。
「やっと、……やっと咲かすことが出来ました……!」
「すごい綺麗だよ、桜お姉ちゃん!私も負けてられない!すぐに自分の華を咲かせられるようになるんだから!」
「だね〜!ビオラちゃん、どっちが先に咲かせられるか、勝負しようか!」
ビオラとひまわりが、桜の喜びを代弁するかのようにはしゃいでる。ヒガンバナは桜を優しく見つめ、言葉を紡いだ。
「おめでとう、桜ちゃん。他の子の花も綺麗だけど、やっぱり自分の花が1番だと思うよね……!」
「ヒガンバナさん……。ありがとうございます!良いものですね、自身の花を眺められるというのは……」
桜は眼前に広がる桜並木を心ゆくまで堪能した。花弁が舞い、4人を祝福するかの如く降り注いだ。
「どうする、桜ちゃん?ちょっと休憩してから出発する?」
桜の疲れた様子を見て、ひまわりが心配そうに話しかける。
「いえ、このまま歩きましょう!この桜を見て元気がでました!」
少し空元気な状態なのは、3人も十分に分かった。ただ、それ以上に桜が、この桜並木の下をすぐに歩きたい気持ちは伝わる。
「うん!行こう、桜お姉ちゃん!今度は私が支えてあげる!」
ビオラがこれまでにない笑顔で答える。
「アタシも、実はすっごく走り回りたい気分なんだよね〜!朝日も気持ちいいし、これだけ綺麗に咲いてる花を前に我慢出来ないよ〜!」
言葉の通り、ひまわりは今にも走り出しそうな勢いだった。
「ちょっとみんな、はしゃぎすぎだよー。桜ちゃん、私も肩を貸すし、みんなで歩こうか!」
ヒガンバナも桜を力強く見つめる。
「皆さん……!はい!いざ、参りましょう!」
「おお〜!」
4人が高らかに拳を上げ、桜並木の下を歩き始めた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
もちろん物語はまだまだ続きます。書きたいエピソードはあるのですが、そこに辿り着くまで自然な流れで書こうとすると、今のペースだと後一年くらいかかるかもしれません。
早く続きが読みたい方がいればコメントください。投稿頻度を上げます。別に無くても書きますのでご安心ください。
全く評価が無くても、必ずこの物語を完結させることだけはお約束します。




