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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第二章 咲耶姫

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第22話 「信じて待っていてください!」

 仙狐の元へ向かう桜とひまわりを前に、野狐が立ち塞がる。


「邪魔しないで!」


「退いていただきます!」


 2人はあえて尻尾を狙わず、野狐を押し退けるための攻撃をした。野狐が弾かれ、仙狐までの道が開かれる。


「慈恩!」


 ひまわりの拳が、仙狐の尻尾に阻まれてしまう。


「でしたらわたくしが!霞艶武ーー御神楽!」

 

 桜の鋭い一太刀が仙狐の胴体を捉えた。しかし、仙狐の毛皮が刀の侵入を防ぎ、胴体を斬るまでには至らない。


「くっ……やはり、うぐっ!」

   

「桜ちゃん!あぅっっ!」


 ひまわりの拳を防いだ尻尾とは反対の尻尾が動き、桜を吹き飛ばす。やられた桜に視線を向けてしまったひまわりは、仙狐から一瞬気を離してしまう。それを狙い澄ましたかのように、仙狐はひまわりも同様に跳ね除ける。


「桜お姉ちゃん! ひまわり!」


「ビオラちゃんっ、駄目! 堪えて!」


 怒りに任せ、仙狐の元へ走り出そうとするビオラをヒガンバナが止める。


「ヒガンバナちゃん、でも……!」


「あの2人なら大丈夫!後ですぐ行くから!今は、仙狐の弱点を見つけよう! 」


「うぅ……。分かった! どこ狙えばいい?」


「まずは目、あとは胴体ならどこでもいいから、何発か撃ってみて。この距離だと貫通は出来ないと思うけど、確認したい事があるから」


「りょーかい!トゥシュ、ドゥヴァ、イェデン、ゼロ、ゼロ、ゼロ! 」


 ビオラの弾丸が、仙狐の身体目掛けて放たれる。しかし、どれも1本の尻尾により弾かれてしまう。だが、他の尻尾の微かな動きをヒガンバナは見逃さなかった。


「尻尾それぞれに役割があるみたい。桜ちゃんとひまわりちゃんに伝えなきゃ!」


「もう桜お姉ちゃんのところ行っていい?」


「うん、待ってくれてありがとう、ビオラちゃん!」


 2人は急いで桜とひまわりが倒れてる場所へ走る。

 しかし、倒れた相手を野狐は見逃さない。桜目掛けて野狐が突進する。


 それを阻止すべく、ビオラが銃弾を放つ。

 放たれた銃弾は、野狐の目玉に当たる。それでも野狐は、ビオラを一瞥もせず、桜を狙う。   

桜はすぐに起き上がり、野狐の牙と桜の刀が交わる。力で押し負けそうな瞬間、ひまわりの拳が野狐の顔面を捉えた。その衝撃で野狐は横へ飛ばされる。


 何とか間に合い、ヒガンバナ達4人は合流できた。


「2人とも無事?」


 ヒガンバナはひまわり、ビオラは桜に駆け寄る。


「ヒーちゃん!うん、思ったよりやっかいかも」


「桜お姉ちゃん!大丈夫?」


「ありがとうございますビオラさん。おかげさまで助かりました」


 体制を整えて正面に立つ仙狐と野狐に向け構える。


「仙狐の尻尾についてですが、それぞれ統率、制御、感知、防御、制圧の役割を担っています。」


 桜がタブレットに書かれていた情報を共有する。


「おそらく右端が制圧、左端が防御で間違いありません。真ん中の尻尾が統率で、残り2本が制御と感知でしょう……」


 ヒガンバナが続けて話し始める。


「確かに、真ん中とその横にある尻尾が動いてから、野狐の動きが変わったの。あれを止めるか、指示が届かない場所まで離せれば楽何だけど……」


「あの弾かれ方だと、至近距離で撃っても、私のライフルじゃ貫通出来ないかも……」


 銃口を向けるビオラだが、弱気な本音が漏れる。


「大丈夫だよ!……って言いたいところだけど、ちょっと怪しいかもね……」


 口籠るひまわりを見て、唇を噛み締めるヒガンバナ。皆を見渡して、桜が決心した。


「わたくしに仙狐を任せてもらえないでしょうか?先ほどは駄目でしたが、この刀の本来の力を発揮出来れば、必ず切れます!」


 自信はなかった。しかし、それ以外の突破口は見つけられない。


「桜お姉ちゃん……でも……」


 言い淀むビオラ。桜の決心を後押ししたのはヒガンバナだった。


「分かった!桜ちゃんなら絶対に倒せる!だから、私達は野狐を出来るだけ引きつけよう!」


「だね!な〜にビオラちゃん?桜ちゃんが信じられないの?」


 明るい口調で鼓舞するひまわり。ビオラその声を聞き、首を大きく横に振る。


「そんなわけないでしょ!桜お姉ちゃんになら安心して任せられる!初めての相手でちょっと弱気になってただけよ!」


 桜は微笑み、そして力強く宣言した。


「皆さん……ありがとうございます!信じて待っていてください!」


「じゃあアタシが仙狐までの道を作るから、桜ちゃん、ついてきて!」


「ええ!」


 ひまわりが駆け出す。その後を追うように桜が走り出す。


「私達は距離をとって野狐を引き付けよう!ビオラちゃん、お願い!」


「うん!桜お姉ちゃん、信じてるから!」


 ヒガンバナとビオラはひまわり達とは別方向に走った。

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