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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第二章 咲耶姫

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第21話 「コレ以上ノ会話ハ不要デス」

 先頭に出てきた仙狐(せんこ)が4人をじっと見つめる。


「・・・何かしゃべるかな?」


「どうせ喋っても会話にならないわよ」


 ひまわりとビオラが顔を近づけて小声で話す。


「ハジメマシテ、ワタシハNo.39仙狐、ト申シマス」


「貴方方ガワタシノ部下、No.69野狐ヲ破壊シタ者達デスネ?」


 仙狐が話し始める。その声は野狐(やこ)と同じく、抑揚のない機械的な音だった。


「だとしたら何よ? 仕返しにでもしにきたの?」


 ビオラがライフルを向けたまま質問を返す。


「・・・仕返シ。・・・ソウデスネ。貴方方ヲ処理スル為ニキマシタガ、ソレヲ仕返シト捉エルノハ貴方方ノ自由デス」


 少しの沈黙の後、仙狐が答える。次に口を開いたのはひまわりだった。 


「何でそんな事するの?」


「・・・何故? 貴方方人間ガソウ造ッタカラデスヨ」


「それに対して何か思う事はないのですか?」


 刀の柄を握る桜の手が僅かに揺れた。怒りか、動揺か。本人にも判断がつかないほど微かなものだった。


「・・・思ウ事?・・・私ニハ感情ニツイテ思考スルプログラムハ施サレテイマセン。」


「じゃあ、お互いに戦わない、って選択肢はない?」


 ヒガンバナはまっすぐ仙狐の目を見る。しかし、返ってくるのは感情のない視線のみ。


「アリマセン。現在私ニ与エラレテイル命令ハ一ツ。生存者ヲ発見次第、排除処理セヨ。ソレノミデス」


「じゃあ何で話しかけてきたのよ? どうせ殺すなら対話なんて無駄でしょ?」 


「私ノ創造主ノ意向デス。人間ハ死ヲ目前ニシタ際、ドノヨウナ反応ヲ示スノカ。ソレヲ記録シロ、ト」


「ダカラ、イキナリ襲ウノデハナク、会話ヲシ、様子ヲ観察スル。ソレガ目的デス」


「その創造主は、今どこにいるの?」


 ひまわりは拳を軽く握り、いつでも動けるよう構える。


「・・・ワカリマセン。アル日ヲ境ニ連絡ガ途絶エマシタ」


 仙狐は口を閉じ、一度だけ瞬きをした。

 思考の切り替え、ではなく感情を持つ存在の癖を模倣するような仕草だった。


「・・・アリガトウゴサイマシタ。アル程度、記録モ取レタノデ、コレ以上ノ会話ハ不要デス」


 5本ある尻尾の内、1本が動いた。それを合図に、2列に並んでいた野狐が一斉に襲いかかる。


「皆さん! 昨夜の作戦通りに! 」


「りょーかい!」


 桜とひまわりが前に出る。ビオラがライフルを構え、引き金を引く。その横でヒガンバナは周囲に視線を配り、仙狐と野狐の動きを観察する。


霞神楽(かすみかぐら)ーー壱の太刀!」


鉄騎初段(てっきしょだん)!」


 ビオラの弾丸により動きを止められた野狐二体を、桜とひまわりが仕留める。


「ビオラちゃん、2時の方向から3体!9時の方向から1体!」


「分かったわ!」


 ヒガンバナの指示にビオラは身体の向きを変え、銃弾を放つ。弾丸は野狐の関節部分を捉え、その場に倒れ込む。


(わたくし)とひまわりさんで3体を潰します! ビオラさんは残りの1体を!」


「オッケー! 行くよ、桜ちゃん!」


「任せて! 桜お姉ちゃん!」


 桜とひまわりが、倒れた3体の野狐へ向かう。ビオラも、別の方向で倒れている野狐に近づく。ヒガンバナはビオラの後を追いながら、仙狐に目を向ける。仙狐の目は、じっと四人の動きを捉えていた。


 三人はそれぞれ、難なく倒れた野狐の尻尾を破壊する。これで残りは5体。このまま何もなく、全ての野狐を行動不能に出来ると思った刹那、仙狐が口を開いた。


「ヤハリ、野狐単体ノ性能ノミデノ処理ハ無理デスカ」


 その言葉と共に、今度は2本の尻尾が動いた。その動きに呼応するように、2体の野狐が桜とひまわり目掛けて走る。


「ビオラちゃん、お願い!」


「見えてるわよ!」


 ヒガンバナの声に合わせ、ビオラはすぐに銃口を向ける。そして、これまでと同じように正確な射撃で野狐の動きを止めるーーはずだった。


 ビオラから弾丸が放たれた瞬間、野狐が走る速さを変える。弾丸は空を切り、野狐に当たることはなかった。


「嘘っ? 外した!」


「動きが変わった……?」


 ビオラは、まるで信じられないといった表情で顔を上げた。ヒガンバナは野狐の動きに違和感を覚える。


「ひまわりさん、後ろ!」


「分かってる!」


 尻尾を破壊する為、仙狐達から背を向けていた桜とひまわり。だが銃声を聞き、即座に身体を反転させ、刀と拳を振るった。しかし2体の野狐はすぐ後ろへ下がり、身を躱す。


「……おかしいですね」


「桜ちゃんも気づいた?」


「ええ。先ほどまでとは身のこなしが違いました」


「だよね……。当たると思ったんだけど」


「桜ちゃん! ひまわりちゃん! 仙狐が尻尾を動かしてから、野狐の動きが変わったの! 先に仙狐を倒さないと後々厄介かも!」


 ヒガンバナが叫ぶ。その声を聞き、2人は目標を仙狐に変える。


「流石ヒガンバナさん。よく見てますね」


「ありがとうヒガンバナちゃん!それじゃあ桜ちゃん、行こうか!」


「はい!いざ、参ります!」


 桜とひまわりは勢いよく仙狐へ向け走り出した。

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