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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第二章 咲耶姫

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第20話「全員返り討ちにしてやるんだから!!」

 明け方前。辺りはまだ薄暗く、日が差すまであと少しといった時間帯。


 ひまわりの腕時計が鳴る。


「う〜ん。・・・えっ、なになになに!?」


 騒がしくするひまわり。徐々に他の3人も起き出す。


「うるっさいわねー。あれっ?まだちょっと暗いうちからどうしたのよ・・・?」


 周囲を確認するビオラ。


「おはよー。朝から元気だねー。・・・・・・ちょっと早くない?」


 ヒガンバナも辺りを見渡す。日が昇らない時間から騒ぐひまわりに、違和感を感じる。


「皆さんおはようございま・・・っ!ひまわりさん!それ、腕時計が!」


 寝ぼけまなこだった桜。しかし、ひまわりの腕時計から発せられる音を確認した瞬間、目を見開く。


「そうなの! 機獣が近くに来てるみたい!」


「それを早く言いなさいよ! 呑気に喋ってる場合じゃないわよ!」


 慌てて拳銃のホルスターを腰につけ、ライフルを準備し出すビオラ。


「みんなの足を引っ張らないように頑張らないと・・・!」


 身体を振りストレッチをするヒガンバナ。その目には昨夜までの不安はない。


「準備ができても、すぐには外へ出ないように! 窓際から様子を見ましょう・・・!」


 桜は、着物の帯を結び直しながら指示を出す。


「う〜ん、まだ薄暗いから森の奥までは見えないな・・・」


 窓から頭を出し、外を見つめるひまわり。


「いや、結構な数が近づいて来てるよ。それと・・・・・・うん? 一体だけ周りより大きいのがいる」


 ヒガンバナがひまわりの横から窓の外を見る。


「よし! これでいつでも行けるわ!」


 ライフルを構え、準備万端のビオラ。桜も身支度を整え、刀を脇に差し窓際に近づいた。


「ヒガンバナさん、(わたくし)もまだ姿は見えませんが、野狐(やこ)は何体ほどいますか?」


「ちょっと待ってね。ええっと、昨日の野狐が11体と、あと一回り以上大きいのが後ろにいる。多分、あれが仙狐(せんこ)ってやつかも・・・」


 桜の問いかけに、更に窓に顔を近づけて目を凝らすヒガンバナ。


「11体⁉︎ 昨日より増えてるじゃないの!しかも親玉まで連れてきて、完全に昨日の仕返しに来たって感じね」


 ビオラも窓際に近づき、外を見る。だか、ヒガンバナ以外の3人は、まだ敵の姿を視認できていない様子だ。


「何体いたって関係ない! 全員返り討ちにしてやるんだから!!」


 ひまわりが拳を硬く握る。


「えぇ。やってやりましょう!」


 桜も頷き、刀の柄を握る手に力が入る。


「じゃあ、みんな準備出来たみたいだし、外に出ようか」


 ヒガンバナの言葉に、全員が顔を見合わせて頷く。そして、民家から出て森からの刺客を待った。


 

 統率された規則正しい足音が近づいてくる。4人が固唾を飲んで見守る中、だんだんと姿がはっきり見えてきた。


 11体の野狐は、どの個体も昨日同様、全く同じ姿形をしていた。淡い琥珀色の毛皮、左右対称で感情のない目、獣と機械の中間点のような存在。

 その後ろに立つ、一回り以上大きい個体は、特に異質さを放っていた。



 野狐とは対象的な、白銀の毛皮。まるで光を飲み込むような質感は、どこか美しさを感じる。

 頭部の作りは似ているが、目の造りだけは違った。片目は同じ液体金属のようだが、もう片方は、人間の瞳に近い有機的な目をしている。

 尻尾は五本あり、自らの存在を示すかの如く広がっていた。

 まさに、統率者の意を体現したかに思える風貌だった。



「いかにもボスです、ってのが出てきたわね」


 ビオラが正面の野狐にライフルの銃口を向ける。


「ひまわりさん、あの白銀の個体にレーザーを当ててもらえますか? 十中八九、仙狐でしょうが、念のために」


 桜が胸元からタブレットを取り出し、画面を確認する。


「うん。ちょっと待っててね」


 ひまわりが左腕を伸ばし、手首を下に向ける。腕時計から一直線に伸びたレーザーが、白銀の個体を指すと、桜のタブレットに情報が映し出された。



 ───【機獣データ:No.039 仙狐せんこ)】───

 分類:狐型機獣(地上種)

 危険度:B+(単独行動/高機動/指揮型)

 主な特徴:白銀の毛並は高密度に編成された金属繊維で構成されており、通常兵装では損傷を与えられない。

 5本の尾部はそれぞれ、統率、制御、感知、防御、制圧の役割を担っている。

 備考: No.068 野狐やこを統治する個体であり、単独でも高い戦闘能力を有する。




「あれが仙狐で間違いありません。おそらく、野狐より硬い毛皮で出来てます。五本の尻尾も厄介ですね・・・」


 桜はタブレットをしまいながら、3人に情報を共有する。


「やっぱり一回り大きい分、強いのかな?」


 ひまわりがレーザーを止め、腕を下げながら桜に質問する。


「そのようです。単独でも高い戦闘能力を有する、と書かれていたので」


「あれっ? 何か仙狐だけ前に出てきたよ」


 11体の野狐が、その場でピタリと歩みを止める。その奥から仙狐のみが歩みを続け、ヒガンバナ達4人の元に近づいてきていた。

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