第20話「全員返り討ちにしてやるんだから!!」
明け方前。辺りはまだ薄暗く、日が差すまであと少しといった時間帯。
ひまわりの腕時計が鳴る。
「う〜ん。・・・えっ、なになになに!?」
騒がしくするひまわり。徐々に他の3人も起き出す。
「うるっさいわねー。あれっ?まだちょっと暗いうちからどうしたのよ・・・?」
周囲を確認するビオラ。
「おはよー。朝から元気だねー。・・・・・・ちょっと早くない?」
ヒガンバナも辺りを見渡す。日が昇らない時間から騒ぐひまわりに、違和感を感じる。
「皆さんおはようございま・・・っ!ひまわりさん!それ、腕時計が!」
寝ぼけまなこだった桜。しかし、ひまわりの腕時計から発せられる音を確認した瞬間、目を見開く。
「そうなの! 機獣が近くに来てるみたい!」
「それを早く言いなさいよ! 呑気に喋ってる場合じゃないわよ!」
慌てて拳銃のホルスターを腰につけ、ライフルを準備し出すビオラ。
「みんなの足を引っ張らないように頑張らないと・・・!」
身体を振りストレッチをするヒガンバナ。その目には昨夜までの不安はない。
「準備ができても、すぐには外へ出ないように! 窓際から様子を見ましょう・・・!」
桜は、着物の帯を結び直しながら指示を出す。
「う〜ん、まだ薄暗いから森の奥までは見えないな・・・」
窓から頭を出し、外を見つめるひまわり。
「いや、結構な数が近づいて来てるよ。それと・・・・・・うん? 一体だけ周りより大きいのがいる」
ヒガンバナがひまわりの横から窓の外を見る。
「よし! これでいつでも行けるわ!」
ライフルを構え、準備万端のビオラ。桜も身支度を整え、刀を脇に差し窓際に近づいた。
「ヒガンバナさん、私もまだ姿は見えませんが、野狐は何体ほどいますか?」
「ちょっと待ってね。ええっと、昨日の野狐が11体と、あと一回り以上大きいのが後ろにいる。多分、あれが仙狐ってやつかも・・・」
桜の問いかけに、更に窓に顔を近づけて目を凝らすヒガンバナ。
「11体⁉︎ 昨日より増えてるじゃないの!しかも親玉まで連れてきて、完全に昨日の仕返しに来たって感じね」
ビオラも窓際に近づき、外を見る。だか、ヒガンバナ以外の3人は、まだ敵の姿を視認できていない様子だ。
「何体いたって関係ない! 全員返り討ちにしてやるんだから!!」
ひまわりが拳を硬く握る。
「えぇ。やってやりましょう!」
桜も頷き、刀の柄を握る手に力が入る。
「じゃあ、みんな準備出来たみたいだし、外に出ようか」
ヒガンバナの言葉に、全員が顔を見合わせて頷く。そして、民家から出て森からの刺客を待った。
統率された規則正しい足音が近づいてくる。4人が固唾を飲んで見守る中、だんだんと姿がはっきり見えてきた。
11体の野狐は、どの個体も昨日同様、全く同じ姿形をしていた。淡い琥珀色の毛皮、左右対称で感情のない目、獣と機械の中間点のような存在。
その後ろに立つ、一回り以上大きい個体は、特に異質さを放っていた。
野狐とは対象的な、白銀の毛皮。まるで光を飲み込むような質感は、どこか美しさを感じる。
頭部の作りは似ているが、目の造りだけは違った。片目は同じ液体金属のようだが、もう片方は、人間の瞳に近い有機的な目をしている。
尻尾は五本あり、自らの存在を示すかの如く広がっていた。
まさに、統率者の意を体現したかに思える風貌だった。
「いかにもボスです、ってのが出てきたわね」
ビオラが正面の野狐にライフルの銃口を向ける。
「ひまわりさん、あの白銀の個体にレーザーを当ててもらえますか? 十中八九、仙狐でしょうが、念のために」
桜が胸元からタブレットを取り出し、画面を確認する。
「うん。ちょっと待っててね」
ひまわりが左腕を伸ばし、手首を下に向ける。腕時計から一直線に伸びたレーザーが、白銀の個体を指すと、桜のタブレットに情報が映し出された。
───【機獣データ:No.039 仙狐】───
分類:狐型機獣(地上種)
危険度:B+(単独行動/高機動/指揮型)
主な特徴:白銀の毛並は高密度に編成された金属繊維で構成されており、通常兵装では損傷を与えられない。
5本の尾部はそれぞれ、統率、制御、感知、防御、制圧の役割を担っている。
備考: No.068 野狐を統治する個体であり、単独でも高い戦闘能力を有する。
「あれが仙狐で間違いありません。おそらく、野狐より硬い毛皮で出来てます。五本の尻尾も厄介ですね・・・」
桜はタブレットをしまいながら、3人に情報を共有する。
「やっぱり一回り大きい分、強いのかな?」
ひまわりがレーザーを止め、腕を下げながら桜に質問する。
「そのようです。単独でも高い戦闘能力を有する、と書かれていたので」
「あれっ? 何か仙狐だけ前に出てきたよ」
11体の野狐が、その場でピタリと歩みを止める。その奥から仙狐のみが歩みを続け、ヒガンバナ達4人の元に近づいてきていた。




