第18話 「大丈夫だよ! 」
民家の古びたソファに、4人は腰を下ろした。戦闘で疲れ切った身体が、まだ微かに痛む。
「ヒガンバナさんもだけど、ひまわりさん、結構傷だらけですね・・・・・・。どちらから手当てしますか?」
桜の声は冷静だが、目にわずかな心配が宿る。
「私よりひまわりちゃんの方が・・・・・・」
「アタシは大丈夫だから、先にヒーちゃんをお願い!」
ひまわりは必死に手を振り、桜に懇願する。
「ちょっとひまわり! ヒガンバナちゃんよりボロボロじゃないの! 全く、少しは自分の身体も気にして!」
「アタシはこれくらい、いつものことだから!ねっ、桜ちゃん、お願い!」
必死さの裏にあるひまわりの優しさが、薄暗い部屋の空気を切り裂くようだ。
桜は小さく息を吐き、頷いた。
「わかりました。では、ヒガンバナさんから先に」
桜は立ち上がり、ヒガンバナの前に立つと掌をかざした。淡い桃色の光が彼女を包み込み、傷がゆっくりと塞がっていく。ひまわりが息を詰めて見守る。
「ヒガンバナちゃんが、こんなにやられてる姿、初めてかも・・・・・・。何があったの?」
ビオラも眉をひそめ、戦闘中の異変を思い返す。
ヒガンバナは視線を床に落としたまま、かすかに震える声で答えた。
「・・・あの野狐から、敵意を感じなかったの。いつもなら身体が自然に動くのに、今回は・・・動かなくて・・・・・・」
「敵意がない・・・・・・?」
桜の表情にわずかな戸惑いが走る。
「それって、つまり・・・?」
「普段なら攻撃に合わせて反撃できる。でも今回は、相手の意図が読み取れなかったから、身体が反応しなかった・・・・・・」
ヒガンバナの言葉に、ひまわりの小さな手がそっと彼女の肩に触れる。
「でも、攻撃は避けられたでしょ? それって、ヒーちゃんの力は使えてたってことなんじゃない?」
ヒガンバナが微かに笑う。どこか痛々しいけれど、希望を失ってはいないようだ。
「うん、無意識じゃなくて意識的に動かしたの。でも・・・・・・こんな経験、初めてだから、よく分からなかった」
ビオラが視線を窓の外に向ける。
「・・・あの野狐が特別だっただけなのかな?それとも、機獣全般に言えることかも・・・・・・」
部屋には戦闘の残像と、まだ消えない緊張が漂う。その空気を取り払うように、ひまわりの明るい声が響いた。
「大丈夫だよ! ヒーちゃんの力が使えなくたって、アタシ達がいる! みんなで支え合って戦えば、機獣なんて目じゃないよ!!」
ひまわりの言葉がヒガンバナの胸を満たす。仲間がいる。支えてくれる。その安心感がヒガンバナには心強かった。
桜は優しく微笑み、ひまわりを見つめる。
「ひまわりさんの言う通りですね。私達に任せてください! 何も心配する必要はありませんから」
「ひまわりもたまには良いこと言うじゃない。ヒガンバナちゃんは安心して見てていいからね!」
桜に続きビオラもヒガンバナを励ます。3人の優しさに触れ、ヒガンバナは目頭が熱くなった。
「みんな・・・・・・うん! 私も頑張ってみるけど、もしもの時はお願いね!」
その言葉と共に、ヒガンバナは自然と笑顔を取り戻す。仲間を信頼し、頼る強さを得た瞬間でもあった。




