第15話 「全然話聞いてくれないのね!」
桜の声を聞き、目の前に迫る2体の野狐にひまわり集中する。
「さっきヒーちゃんから教わったこと試してやる!」
拳を硬く握り、正拳突きを放つ。野狐の腹部に当たり、手応えを感じるも決定的な一撃にはなり得なかった。
その衝撃で1体は後方へ押し戻せたが、もう1体への攻撃は間に合わない。
牙を見せ噛みつこうとする野狐の顎を、肘を返して上に跳ね上げた。
追撃を察知した野狐が後ろに飛び距離を取る。
「腹部ニ衝撃ヲ検知シマシタ。異常ノ有無ヲ確認シマス。・・・・・・異常ナシ。行動ヲ続ケマス」
「顎部ニ衝撃ヲ検知シマシタ。異常ノ有無ヲ確認シマス。・・・・・・異常ナシ。行動ヲ続ケマス」
再びひまわりに狙いを定めて追撃の姿勢をとる野狐。対するひまわりは、ヒガンバナとのやりを思い出していた。
「ヒーちゃんに支えてもらった時はもっと威力があったのに・・・」
先ほどの突きも威力はあった。しかし、ヒガンバナに手伝ってもらった時に放ったものには遠く及ばない。
「構え方・・・は、同じだったし、・・・腰の動き、腕の出し方?・・・・・・うわっ!」
ひまわりの思考時間を野狐が待つはずもなく、お構いなしに襲ってくる。
右へ左へと攻撃を躱しながらタイミングを図り、何度か拳を当てる。その度に野狐を押し除ける事が出来るが、致命的なダメージにはなりえなかった。
「もう少し・・・あとちょっとで何か掴めそうなのに・・・・・・」
元々ひまわりは感覚で闘うタイプだ。慣れない思考は身体の動きを鈍くしてしまう。その隙をつかれ、ついに野狐の牙がひまわりに届いてしまった。
「痛っつ・・・!こっっの!」
肩を噛まれ、苦痛に顔を歪める。何とか野狐を引き剥がすも、熱い痛みとともに血が滲み出した。
「出血ヲ確認。投降シマスカ?」
「するって言ったら攻撃止めてくれるの?」
「・・・・・・投降ノ意思ガ見ラレナカッタタメ、行動ヲ続ケマス」
「全然話聞いてくれないのね!」
一瞬会話が可能かにも思えたが、こちらの話を一切聞いてない返答に、ひまわりは野狐との対話を諦めた。
このままでは埒があかないと思ったひまわりは、野狐から少し距離を取った。そして軽く目を閉じ精神を集中させる。
深く息を吸い、ゆっくりと口から吐く。そして最初に見せた構えをとり野狐がくるのを待った。
一体の野狐が突進してくる。獰猛な牙がひまわりの喉元へ迫る。ぎりぎりで腕を捻じ込み噛みつきを受け止めた。その代償は大きく、牙が腕に食い込み鋭い痛みがひまわりを襲う。
しかし、ひまわりは臆する事なく、噛まれている方とは反対の腕に力を込める。
そして渾身の力で野狐の腹部目掛けて拳を放った。その突きはヒガンバナに教えてもらった時ほどの威力は出なかったものの、これまでの威力とは明らかに違う手応えをひまわりは感じた。
「今の・・・!」
野狐の口から力が抜け、その場に倒れ込む。
「確か尻尾が弱点だったよね!」
倒れ込んだ野狐の尻尾目掛けて拳を振り下ろす。
「鉄騎初段!」
ひまわりの拳と地面に挟まれた野狐の尻尾は粉々に破壊された。
「よしっ!・・・これなら!」
残るもう一体の野狐がひまわりに迫ってきた。今度は身を躱し、踏み込みと同時に身体をひねる。膝と肘で野狐の尻尾を挟み込むように叩きつけた。
挟撃の衝撃で野狐の尻尾は潰された。
「危なかった〜!痛ててっ・・・!早くみんなに加勢しなくちゃ!」
ひまわりが改めて周囲を見渡すと、意外な光景が広がっていた。




