第12話「あれが・・・・・・機獣・・・?」
「皆さん、何が出てくるか分かりませんが、いつでも動けるように準備してください」
桜が刀の柄に手を添え、3人に警戒するよう促す。それに応えるようにそれぞれが身構える。
「姿が見えた瞬間に撃った方がいいかな?」
ビオラが拳銃を正面に構えたまま、目線を少しだけ動かし回答を待つ。
「もしかしたら他の子達かもしれないし、止めておいた方がいいかも」
ヒガンバナは肩の力を抜き、リラックスした状態で両手を前に出し構えていた。ビオラに言葉を返した際も、足音のする方向から一切視線を逸さなかった。
「でも足音の数多くないかな? そんな大人数で動いてるのって聞いたことないし、アタシの腕時計が反応してるって事は・・・」
今も微かに振動している腕時計をチラリと見ながら、ひまわりが緊張した声色で答えた。身体を半身にし、膝を軽く曲げた状態で左手は肩より少し下、右手は腰の位置につけて構えている。
「もしも機獣らしきものだった場合、ベゴニア様から教わったように、ひまわりさんの腕時計を試してみましょう」
桜の提案にひまわりが軽く頷く。
全員の意思疎通が終わってから数秒後、足音の正体が現れた。
――それは、まるで誰かが“生き物”という概念を模写しようとして造ったようだった。
四足で立つ、しなやかな輪郭。
毛皮は淡い琥珀色に輝き、風もないのに流体のように揺らいでいる。
頭部は尖り、耳が長く立っているが、動きがない。呼吸の音も鼓動の気配もなく、ただ無音のままそこに存在しているだけだった。
目は不自然なほど整っていた。左右対称に配置された瞳孔は、液体金属のような質感で、光を受けても影を作らない。
尾が一本。だがその表面には微細な刻線が走り、まるで精密な機械の外殻を思わせた。
その個体が全部で8体。外見の違いは全くなく、まるで一つの神経で繋がれているかのように、完全に同じ歩幅で進んできた。
それは獣にも、機械にも見えるが、どちらでもなかった。
ただ――何かを模倣しているようだった。
かつて、この世界にいた「生き物」というものを。
「あれが・・・・・・機獣・・・?」
「ひまわりさん!腕時計を! 私はタブレットを確認します! 」
戸惑うひまわりに指示を出し、片手で懐からタブレットを取り出す桜。その桜を警護するように前に出るヒガンバナとビオラ。
桜の声を聞いたひまわりは冷静さを取り戻し、ゆっくりと左手を前に出し、腕時計の側面にある突起を引いて手首を下に向ける。
その突起部分からレーザーが発射され、前方にいる四足歩行の個体の一体に当たった。その瞬間、桜の持っているタブレットが反応し、画面に説明文が表示された。
───【機獣データ:No.068 野狐】───
分類:狐型機獣(地上種)
危険度:C+(集団行動/高機動)
主な特徴:毛並は淡い琥珀色の金属繊維で構成され、光の反射によって生体毛皮のように見える。
尾部に制御アンテナを備え、これが損傷すると自動で活動を停止する。
備考:常に複数個体で行動し、その統率は、No.039 仙狐が行っている。
表示された説明文を読んだ桜が内容を小声で伝える。
「あれは野狐という機獣で、尻尾の部分が弱点のようです。もしこちらを襲ってきたらそこを狙ってください。」
「桜ちゃん、もうレーザー当てなくてもいいかな・・・?」
「えぇ。もう大丈夫です、ありがとうございました」
ひまわりはレーザーを消すと再び戦闘態勢に入る。桜もタブレットを懐にしまい、刀の柄を握り直した。
4人が警戒して動けない中、野狐は足並みを崩す事なく、だんだんと距離を詰めてきていた。




