第11話 「だから問題なの!」
ナナフシが完全に見えなくなって後、4人は再び旧東北新幹線の線路沿いを歩き始めた。
「それにしてもちょっとかわいそうだったかな・・・」
両手を頭の後ろで組み先頭を歩くひまわりがナナフシの事を思い出しぽつりと呟く。
「あの2人に会って生きてるだけマシなんじゃない? それに桜お姉ちゃんが、あのヒトについて忠告もしてあげてたし、何とかなるでしょ」
ビオラがそう応えると、桜が苦々しい表情を浮かべながら申し訳なさそうに口を開いた。
「とはいえあのヒトに会ったら終わりですからね・・・。蘭さんと菊さん以上に聞く耳を持たないヒトですし・・・」
「椿さんなりの美学があるみたいだけど、あの闘い方は私達には理解できない部分があるからね」
最後尾を歩くヒガンバナが、椿という名前を挙げた瞬間、他の3人が一斉に振り返り驚愕した顔を見せる。
「ちょっとヒーちゃん! みんなあえて名前出さなかったのになんで言っちゃうの!?」
「そーよ! ヒガンバナちゃんもあの情景忘れた訳じゃないでしょ⁉︎ 名前聞くと今でも思い出して寝れなくなっちゃうんだから!!」
「流石に私も今回ばかりは擁護できません・・・。2度と思い出したくないほど恐ろしいものでしたから・・・」
それぞれが矢継ぎ早にヒガンバナを攻め立てる。それほど椿という人物の闘い方が恐ろしいものだったのだろう。
「私もあれに関してはみんなと同じで怖かったよ! でも、悪気があってやってる訳じゃないんだし・・・」
「だから問題なの! 蘭さんや菊さんみたいに切断面見るのや骨の折れる音が好きとか、十分訳分からない趣味してるけど、それが万人受けしないって本人たちは理解してるじゃない⁉︎ だけどあのヒトは、自分の嗜好がおかしいなんて微塵も思ってないし、むしろ理解できないこっちに問題があるみたいな雰囲気出してたじゃん⁉︎ 」
ヒガンバナの反論に対しビオラがいつにも増して感情的になる。3人の中でも特に椿に対しての恐怖心があるのが見てとれる。
「話の通じなさで言ったらトップクラスだし、考え方も理解できない部分が多いから、アタシも苦手というか恐ろしいって思っちゃうんだよね・・・」
ビオラの意見に賛同するように、ひまわりが自身の肩を両手で抱きながら口を開く。
「私が言うのも何ですが、この話はここまでにしませんか? 皆さんもこれ以上あの事を思い出したくないでしょう・・・?」
桜が神妙な面持ちで提案すると、ひまわりとビオラはすぐに首を縦に振る。ヒガンバナも物申したい気持ちがあったものの、皆の意見を尊重し、ゆっくりと頷いた。
その後しばらくはたわいのない話をしながら道を進み、夕暮れが迫ってきたため、身体を休めるための空き家を探していた。
「ひっ!! なになになに⁉︎」
ひまわりが急に小さい悲鳴を上げた。
後ろを歩くヒガンバナがすぐに反応する。
「ひまわりちゃんどうしたの?」
「分かんないけど、急にこの腕時計が震え出したの・・・。あっ、これってもしかして・・・?」
「ベゴニア様の言ってた機獣が近くにいるってこと?」
ビオラが腰の拳銃を抜き周囲を警戒する。桜も刀に手を添えて周りを見渡す。
するとどこからともなく規則正しい足音が4人に向かって近づいてきた。




