第10話 「狂園六華って呼ばれてて・・・」
ナナフシが話し終えると数刻の沈黙が訪れる。それに耐えきれず口を開いたのは、桜だった。
「・・・・・・事情は把握いたしました。今回は運が悪かったと言いますか・・・その〜、あの2人の嗜好が少々特別なだけで、他の者達はもっとまともですので安心してください・・・」
「全然フォローになってないよ桜お姉ちゃん・・・ それに蘭さんと菊さんの他にも同じくらい尖ったヒト達いるじゃん・・・」
ビオラの発言に目を見開き、顔を歪ませたナナフシが、声を震わせながら問いかける。
「おい、ちょっと待ってくれ・・・ お前らの仲間には、あんな恐ろしいのが他にもいるのか?」
ビオラがしまったっといった顔で目を伏せる。ナナフシは視線を桜に移すが、桜も口ごもり目線を逸らす。後ろでナナフシの腕を押さえていたひまわりが、申し訳なさそうに答える。
「ええっと、あのヒト達はアタシ達の間で《《狂園六華》》って呼ばれてて・・・・・・あと4人同じような闘い方するヒトがいるから気をつけた方がいいかも」
「嘘だろ・・・・・・」
完全に心が折れたのか、ナナフシが再び項垂れながら目線を下に落とす。
ひまわりが掴んでいたナナフシ腕に動きがあったため一瞬警戒するも、それが恐怖による全身の震えの為だと分かった時、もう許してあげてもいいのではないかとも考えた。
その気持ちを察知したかのように、ナナフシから一切視線を逸らさずに見ていたヒガンバナが、ゆっくりとまばたきをして皆に提案する。
「今ので完璧に戦意を失ったみたいだし、もう逃してあげても大丈夫かな。流石に蘭さんと菊さんみたいなのが他にもいるって知ったら、無闇に他のコ達を襲うことはないでしょ?」
「ああ・・・!約束する!絶対に華乙女には手を出さない!! もうあんな思いをするのはまっぴらだ!」
ナナフシが勢いよく首を縦に振ると、ヒガンバナは他の3人に視線を向ける。3人ともヒガンバナの意見を受け入れるようにゆっくり頷く。そしてひまわりが掴んでいた手を離すと、ナナフシはその場に力なく崩れ落ちた。
助かった安堵と他にも恐ろしい存在がいる事を知った恐怖感が入り混じり、少しの間身体に力が入り切らない状態だった。
やっと気持ちの整理がついたのか、ゆっくりと立ち上がりヒガンバナ達に頭を下げる。
「すまなかった。それと見逃してくれてありがとう。これから細々と逃亡生活を送るよ」
そう言い残し、4人に背を向けてとぼとぼと歩いていくナナフシ。その姿を見て心配そうな顔をしていた桜が、何かを思い出したかのように背中越しに声をかける。
「あっ、最後に脅すわけではないんですが、これだけは覚えておいてください。もし《《白装束を着た紅い髪の毛の方》》をみたら全力で逃げてください・・・。狂園六華の中で1番嗜好が《《アレ》》な方なので・・・」
ナナフシが全力で振り返る。その顔は今日見せた様々な表情の中でも特に恐怖で引きつった顔をしていた。
「おいおい勘弁してくれよ・・・・・・まぁ、警告感謝するよ。じゃあな」
先ほどよりさらに元気のない足取りで去っていくナナフシ。その姿を哀れみの視線で4人は見送った。




