第9話 「俺はどこで間違えたんだ・・・?」
無数の花弁が視界を覆い尽くしていた。
さっきまでここにいた仲間たちの姿は影も形もなく、代わりに白と黄色の花が互いを牽制するように咲き乱れている。
その中心に立つのは二人――白髪の修道女と、金髪の尼僧。まるで絵画のように美しく、そして不気味だった。
「相変わらず、心は濁っているのに咲かせる花だけは純潔そのものね。内面が花の美しさに影響を与える仕組みじゃない事に感謝しなさい」
「おや、それは自己紹介でしょうか? あなたこそ、どこにそんな上品な花を隠し持っていたんです? もし私がもっと卑しくなれれば、あなたに似た花を咲かせられるかもしれませんね」
「ふふん、咲く場所を間違わなければ、あなたの花もそこそこ綺麗よ。ただ・・・あたしの花と並べば霞むのは仕方のないことね」
「まあ、可哀想。花々が泣いていますよ。咲き誇っても、扱う者がこれでは魅力も台無しです。……もっとも、わたしの花々に比べれば及ばぬのは当然ですが」
「言わせておけば――」
「あら、あなたのほうこそ――」
――ただ、恐ろしかった。
俺の仲間を皆殺しにした直後だというのに、2人はまるで何事もなかったかのようにいがみ合いながら言葉を交わしていた。
その後も二人は延々と舌戦を続けながら歩み去っていく。俺は2人の姿が完全に見えなくなるまで、動けなかった。いや、消えた後も恐怖に縫いつけられたように身体が硬直していた。
日が落ちてようやく正気を取り戻したとき、俺は浅草寺に駆け戻った。
そして、寺の周囲を赤く染める花を目にして、クロカタさんもやられたんだなと悟ったよ。
このままラフレシア様のところへ帰っても俺の居場所なんてない。せめて何か功績を残せたらと思って彷徨っていたら、お前らを見つけたってわけだ。
「・・・・・・そっからは知ってのとおり、見事返り討ちにあい、こうして拘束されてペラペラ喋ってる・・・俺はどこで間違えたんだ・・・?」
項垂れながらことの顛末を話すナナフシを見たビオラは、銃口を外す事はなかったが、哀れみの視線を送る。
他3人も同様に哀れみと同情の視線を送りながら、全員心の中で思った。
ーー聞かなきゃよかった・・・・・・と。




