第3話 「気をつけて行ってきなさいな」
「とりあえず一通りの説明は終わったし、これから貴方達の旅について、少し口出しさせてもらうわ」
項垂れている3人を尻目にベゴニアは今後の方針について語り出した。
「あてもなくただ好き勝手に旅をされても困るの。だから貴方達には北の最果て、ホッカイドウを目指しなさい。あの地には十二支の1匹、白虎がいるから、上手く討伐してきてちょうだい」
「北の最果てって、ラフレシアがいるキョウトを目指さなくていいんですか?」
先ほどまで下を向いていたビオラが、ベゴニアの言葉を聞き、すぐに顔を上げ目的地を聞き返す。
当然、ベゴニアからある程度場所の指定があるとは思っていたが、それがラフレシアがいるキョウトではなく、そこからむしろ離れるようにホッカイドウに行けと言われるとは想像もしていなかったようで、ビオラは驚いたように目を見開いている。
桜とヒガンバナも同様に少し困惑した表情を浮かべていた。
唯一、ひまわりだけがホッカイドウという単語を聞き、なぜか目を輝かせ、嬉しそうに小さくガッツポーズをしていた。
「今の貴方達があのクソババアの所に行っても絶対に勝てないからよ。少なくとも全員が千紫万紅を使えないと話にもならないわ」
ベゴニアのラフレシアに対する敵意は相変わらずで、クソババア呼ばわりしているものの、その強さは認めているらしく、現状では4人が束になって挑んでも勝てない相手だと判断しての物言いだった。
「ホッカイドウまではかなりの距離があるし、道中、他の機獣や昆虫騎士団の連中とも出会う事もあるでしょう。そいつらも倒して、今より強くなって帰ってきなさい」
「はい! やったー‼︎ ホッカイドウに行けるんだ!」
ひまわりが食い入るように大きな声で返事をする。
あまりの喜びように隣にいたヒガンバナは、ひまわりに顔を向け問いかける。
「ひまわりちゃんホッカイドウに何かあるの?」
「うん! ホッカイドウはアタシにとって大事な思い出の場所なの! ・・・この身体になってから絶対に行かなきゃって思ってたから、つい嬉しくて!」
その言葉を聞き、「そっか・・・」とヒガンバナは優しい笑みで返す。
「それじゃあ話もまとまったし、気をつけて行ってきなさいな」
「「「「はい!」」」」
ベゴニアが手をひらひらと振り、4人を見送る。
それに応えるように4人が声を合わせて返事をし、部屋を後にした。
宮殿を出て坂下門まで歩いてきた4人は、出発の挨拶をするため、警備をしているミツバチに声をかけた。
「ミツバチの兵隊さん! おはようございます!」
「おや、これはこれは、 おはようございますひまわり殿。それに皆様もお揃いで。いよいよ出発なされるのですね?」
「ええ、ベゴニア様からお話を伺い、これからホッカイドウまで旅をしてきます」
最初にひまわりが元気に挨拶をし、ミツバチの反応に今度は桜が返事をする。
4人の顔をじっくり眺め、全員の晴れた表情を確認するとにっこり微笑み、落ち着いた声で話し始める。
「ホッカイドウですか・・・それは長旅になりますね。しばらく4方殿の顔を見れなくなるのは寂しくなりますな」
「どれくらいかかるか分からないですけど、必ず元気に帰ってきますから!」
ビオラが両手を腰に置き、自信満々に胸を張る。
「ビオラ殿がそう仰るなら間違いないですね。・・・ヒガンバナ殿も昨夜に比べて表情が明るくなって安心しました」
「気づいてたんですね・・・。でもミツバチの兵隊さんの見立て通り、悩みも無くなってスッキリしています!」
昨夜4人が戻ってきた際、ヒガンバナが戦闘による疲労等ではなく、何か精神的な悩みがある事を見抜いていたミツバチは、それが払拭されている事が分かると安心した面持ちで4人の門出を祝った。
「皆様の旅路がより良きものになるよう切に願っております! お身体に気をつけて行ってらっしゃいませ!」
4人全員が元気よく「行ってきまーす!」と返事をし、大きく手を振りながら坂下門を背に歩いていく。
その姿が見えなくなるまで、ミツバチは右手を上げ敬礼の姿勢を保ったまま見送った。




