第2話 「これって大丈夫なやつですか?」
5人の反応を見たアゲハは、なぜ全員が黙っているのか本気で分からないといった顔をしていた。
「・・・? おかしいですね? ベゴニア様の英雄譚を聞いてこれほど反応がないとは・・・。もしや、あまりの衝撃に言葉が出ないほど感嘆しておられるのですね! それならば致し方ありません」
「アンタがいきなり早口で、訳の分からないことを喋るからよ。それにワタシは騒がれるほどのことをしてないわ」
「またまたご謙遜を。私目は、あの日のベゴニア様の英姿を今でも鮮明に覚えていますよ」
「はぁ・・・もういいわ、アンタがこの子達に機獣について教えてあげなさい」
アゲハの少し興奮した語り口に、ため息を漏らしながら説明を任せるベゴニアは、左手で頬杖をつき、目線をアゲハに向け、いかにも気だるそうな顔をしていた。
それからアゲハによる機獣についてのおおまかな説明が始まった。
機獣とは元々、銃や核兵器などに代わる新たな戦争の道具として人類により造られたものであり、その名が示す通り全身が機械でできている。
この世界の様々な場所に生息しており、その姿はかつて実際に生きていた動物はもちろん、空想上の生物を再現した個体も存在する。
個々の能力はまちまちで、いずれも容易に討伐できる個体は多くない。
中でも特に殺傷能力に秀でており、他の機獣にはない特別な知能を持った個体が存在する。
それが十二支の名を与えられた機獣であり、名を糾鼠、覇牛、白虎、脱兎、孤龍、大蛇、天馬、飢羊、夜猿、羅鳥、蒼狗、幽猪と呼ばれている。
既にこの中の5匹は討伐されており、現在でも残っているのが、糾鼠、、白虎、脱兎、孤龍、天馬、夜猿、蒼狗だ。
昆虫騎士団と対立する前までは、華乙女と昆虫騎士団がそれぞれ協力し、機獣の殲滅に尽力していたが、現在はあまり目立った成果を上げれていない。
「・・・・・・といった状況ですので皆様、旅の道中で機獣を発見したら積極的な討伐をお願い致します」
最後にアゲハが軽く頭を下げて話を締めくくる。
話が終わった直後にひまわりが手を上げて質問をする。
「なんとなくその機獣・・・?については分かったんですけど、どうやって見つけたりそれが機獣って判断すればいいんですか?」
「それで重要になってくるのが、そこの机に置いてあるものよ」
ひまわりの質問に答えるように、ベゴニアが机の上に置いてある腕時計とタブレットを指差す。
「まず、その腕時計は半径100mに機獣がくれば反応するようになってるわ。ひまわり、試しに着けてみなさい」
ひまわりは言われるがままに腕時計を左手首に巻いてみる。
そして文字盤の部分をまじまじと見ながら、色々と触ったりしてみるが、特に反応はなかった。
「その腕時計の側面に小さい突起があるでしょ。それを軽く引いて、手首を下に向けるの。こっちじゃなくて後ろを向いてやりなさいよ」
ひまわりが身体を反転させ、後ろの壁に向かって、ベゴニアの指示通りに腕時計を動かしてみる。
すると手首を下に向けた瞬間、腕時計の突起部分から真っ直ぐレーザーが飛んだ。
「うわっ!えっ・・・これって大丈夫なやつですか?」
「大丈夫よ。そのレーザーを機獣に当てるとそっちのタブレットに機獣の情報が出てくるから、それを見て判断してちょうだい」
ひまわりが手首を上に返すとレーザーはすぐに消え、他の3人も興味津々に腕時計を覗き込む。
「それとそのタブレットは地図の役割もあるからくれぐれも壊さないように。腕時計は別に誰が着けててもいいけど、タブレットに関しては、桜、貴方が持ってなさい。」
「私がですか?・・・承知いたしましたが、何か理由でもあるのですか?」
いきなりの指名に若干戸惑いながらも返事をする桜。
そして桜の質問に対してごく自然にベゴニアはこう答えた。
「そんなの、貴方以外が持ったらすぐに壊すのが目に見えてるからよ」
自覚があるのか、桜以外の3人は下を向き、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。




