第16話 「このたびはお疲れ様でございました。」
4人が坂下門に着く頃には日も完全に落ち、辺りは暗くなっていた。
しかし、倒壊しかけのビル内の一部や幾つかの街灯は、人類がいなくなった今も光を放ち、夜道を照らしている。
これは、人類の残した科学力の結晶であり、文字通り人の手を借りる事なく半永久的に、電気、ガス、水道などのインフラ設備を動かす技術であった。
当初はこれらの設備を全て壊して止めた方が良いのではないか、との意見を持つ華乙女も多かったが、ベゴニアの、
「別にワタシ達がどうこうする必要はないわ。そのうち消えるわよ」
という一言があった為、誰も手をつける事はなく、現在も動き続けている。
ただ、ベコニアの言った通り、今では多くの建物が崩れ、それに絡みつくようにツタや木々が生い茂り、電線などを切っている場所が多数ある影響で、夜に明かりを灯す建築物は少なくなっていた。
坂下門の門灯下で周辺の警戒をしていたミツバチは、遠くから来る四つの影を見つけた際、一瞬だけ左腰のサーベルに手をかけたが、その影がヒガンバナ達であることを確認し、すぐにサーベルから手を離した。
そして自身の服装が乱れていないかを確認した後、直立に背筋を伸ばし、ヒガンバナ達が近くまで来ると優しい笑みと敬礼で
出迎えた。
「おかえりなさいませ4方殿。このたびはお疲れ様でございました。ご無事で何よりです。」
「ただいまー!。いや〜、ヒーちゃんのおかげで無事に帰って来れたんだけど、相手も強かったなー」
ひまわりが左手を上げミツバチに挨拶する。口調はいつもと変わらず明るいが、クロカタゾウムシとの戦闘による疲労が完全に抜けきっておらず、未だヒガンバナの肩を借りてやっと歩ける状態だった。
「確かにひまわりが1番最初にやられちゃったからねー。あんまり役に立ってなかったんじゃない?・・・・・・まぁ、私も他人のこと言えないけど・・・・・・」
桜におんぶされたままのビオラが顔を覗かせ呟く。ひまわりに軽口を叩いたはいいものの、自身も役に立てなかったという思いがあるため、どこか覇気のない口調になっている。
その気持ちを察した桜が、首を動かしビオラと目線を合わせ優しく鼓舞する。
「ビオラさん、さっきもお話したでしょ!皆さんは立派に闘っていたのですから、何も気負う必要はありません!・・・堂々と胸を張っていればいいんですよ」
「桜殿のおっしゃる通りです。皆様のお姿を見れば、今回の闘いがどれほど過酷なものであったのかは明白です。そのようなお姿になるまで闘ってくださった方々をどうして無下にできましょうか!・・・・・・本当にお疲れ様でございました」
ミツバチが自身の制帽を取り深く頭を下げる。その姿を見たひまわりとビオラは互いに視線を合わせニコリと笑う。そうして再び元気を取り戻したビオラが軽快な口調で話し始める。
「それじゃあちょっとベゴニア様に報告してくるわね!」
「はい、いってらっしゃいませ。ベゴニア様も皆様のご帰還をお待ちしてるはずです」
制帽をかぶり直し、優しい笑みを浮かべながらミツバチが4人を見送る。
4人は坂下門を入り、ベゴニアが待つ宮殿まで歩きはじめた。




